著者
小川 弘俊 大村 豊 大橋 大造 入谷 勇夫 加藤 政隆 待木 雄一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.250-253, 1986-02-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
15

従来無毒蛇と考えられていたヤマカガシによる蛇咬傷で,著明な出血傾向をきたし脳出血で死亡した症例を経験した. 症例は14歳男性で,ヤマカガシに左手背を咬まれ,数十分後より頭痛が出現,続いて局所が腫脹,約16時間後より出血傾向が出現,約19時間後に昏睡状態となり,さらにその数時間後呼吸停止をきたした.頭部CTスキャンで左側頭葉および後頭葉に脳出血を認めた.交換輸血などを行ったが軽快せず,受傷後10日目に死亡した. ヤマカガシ咬傷では,上顎後部のDuvernoy腺より分泌される毒液が体内に入ることにより出血傾向がひきおこされる.本邦では坂本の症例以来自験例を含めて8例の報告例があり,全例に出血傾向が認められる.咬傷患者に対しては,出血傾向の出現に注意し,異常があれば早期に交換輸血や抗毒素血清の注射などが必要である.