著者
宮澤研人 大村嘉人 山岡裕一
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.154-157, 2020-06-20 (Released:2022-10-22)

生葉上地衣類の一種Aulaxina microphana (Vain.) R. Sant.(ヨウジョウクロフチゴケ属ツブヨウジョウクロフチゴケ,新称)が,西表島で採集されたクロツグ(ヤシ科)の生葉上から確認された.本種は日本新産であり,属としても日本新記録であるため,日本産採集標本に基づく形態情報を報告する.本種の地衣体は薄く(約10 µm),半透明な初生菌糸を伴う.はっきりとした黒色の縁をもつ微小な円形の裸子器(直径0.12–0.28 mm)があり,子器盤は淡黄灰色.子嚢胞子は3つの横断隔壁で仕切られており,隔壁部位にわずかなくびれがあり,大きさは (8.0–)10.6 ± 1.2(–12.5) × (3.0–)3.7 ± 0.6(–5.0) µm.共生藻はトレボクシア様の緑藻.化学成分は薄層クロマトグラフィーでは検出されなかった.非常に微小な地衣類であるために見落とされてきた可能性があり,国内における本種の分布については今後同様な生育環境で詳細な調査を行う必要がある.
著者
大村嘉人 文光喜 柏谷博之
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.303-307, 2000-10-20 (Released:2022-10-21)

ウメノキゴケ科サルオガセ属地衣類の Usnea fragilescens (アッケシサルオガセ 新称)が北海道霧多布湿原周辺で発見された. 本種は西ヨーロッパおよび北米から報告されているが, これまで日本からの報告はなかった.本種の特徴は次の通りである. 地衣体は直立半懸垂性, 不同長二叉分岐, 地衣体基部は黒炭色, 分枝の髄層は厚く軸が細いため膨らんだようになる(%C/%M/%A = 5.1/33/23). 枝の幅ほどの円形の粉芽塊を持ち, その表面はやや凹み, 顆粒状の粉芽を生じる.粉芽塊の縁の皮層は反り返らない. 今回採集された全ての標本は, バルバチン酸, 4-O-デメチルバルバチン酸, プロトセトラール酸を主成分として含む.この化学変異株は本種では初めての報告である.