著者
大森康朝 中川 友紀子 野田 五十樹
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.334-341, 2011-03-15

最新のプロセッサでは複数の実行コアを備えた「マルチコア」が一般的になっている.しかし,多数のマルチコアCPUやGPGPUなどが相互接続された並列分散環境を活用するためのプログラミングは容易ではない.このような並列分散プログラミングの生産性を向上させることを目標とした,新しいプログラミング言語がX10(エックステン)である.X10はいわゆるPGAS(Partitioned Global Address Space)を採用している言語族の一員であり,複数の「プレース」にまたがったデータ構造を扱える.さらに,軽量な並列タスクを生成するための「async」や分散処理のための「at」,同期のための「atomic」や「clocked」などの構文を提供している.本稿では,X10の設計思想やプログラミングモデルに加え,これらの特徴的な構文についても使用例を交えつつ解説する.