著者
蛯江 共生 寛田 司 門田 正久 大槻 洋也 安見 拓也
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P1248-E3P1248, 2009

【はじめに】この度、2008年9月6日~9月17日の12日間、中華人民共和国で開催された2008パラリンピック北京大会(以下パラリンピック)の車いすテニス日本代表チームにトレーナー帯同する機会を得たので報告する.尚、帯同報告発表に際しては日本車いすテニス協会(以下JWTA)、選手にその主旨を説明し承諾を得た.<BR>【大会概要とチーム編成】帯同期間は2008年8月29日~9月19日の21日間であった(大会期間:2008年9月6日~9月17日).車いすテニス競技の参加国は35カ国で男子、女子、クワァドの3クラスで各シングルス、ダブルスが行われた.日本代表チームは選手9名(男子4名、女子4名、クワァド1名)コーチ3名、トレーナー2名の14名の編成であった.<BR>【活動内容】JWTAからの帯同要請を受けた後、事前準備として選手の状態把握、コーチスタッフとの連携、帯同物品の購入、物療機器(伊藤超短波社製トリオ300、ES-520)の手配などを行った.また代表チームには6月の国別対抗戦、8月の事前合宿にトレーナー2名体制で帯同した.パラリンピック期間中は宿舎、試合会場での選手の健康状態のチェック、ケアを実施した.ケア対応は延べ件数80件(練習、試合後のクーリングダウンを目的にしたアイシングは除く)で、疲労回復を目的としたリコンディショニングが中心となった.また、治療部位としては肩関節周囲が多く、前腕、肘、頸部、手、腰部などの順となった.治療内容としては徒手療法、ストレッチ、物理療法、テーピングなどを実施した.その他の活動としては本部医務班へ体調不良者の受診同行、故障者の大会期間中のTUE申請手続きなどの医師への相談などが挙げられる.<BR>【日本代表選手の主な成績】男子シングルス金メダル、男子ダブルス銅メダル、男子シングルスベスト8、ベスト16、女子ダブルスベスト8、クワァドシングルスベスト8<BR>【考察】今大会、車いすテニス日本代表チームでは、はじめてトレーナー2名体制での帯同となったが、パラリンピックを見据えて国別対抗戦、事前合宿への帯同など準備期間があったことはトレーナー間、選手、監督、コーチの双方向でのコミュニケーションを密にする期間として大変有意義であった.またパラリンピック前に開催された障害者スポーツトレーナ研修会や、パラリンピック日本選手団の事前打ち合わせ会の中で帯同する本部医務班医師、トレーナーと競技団体付きのトレーナーの顔合わせなどもできたことで、パラリンピック期間中の医務班との連携も以前よりもスムーズに行えたと考える.今後は各都道府県や地域で障害者のスポーツをサポートしている人達とのネットワークの拡大、障害者のスポーツをサポートする理学療法士が他職種も含めた連携をとることで、更なる障害者のスポーツの発展、競技力向上に繋がっていくのではないかと考える.