著者
大沼 穣
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A33-A55, 2007

公益事業の民間開放を進めてきたEU・欧州委員会は、なぜ水道セクターに限って自由化指令を断念せざるをえなかったのであろうか。確かに途上国インフラブームの終焉によって、水道企業は先進国市場を求めていた。しかし西欧では水道公営の伝統を持つ国々も多く自由化への抵抗も強い。またさまざまな民間的経営手法も普及し始めており、さらには水道企業自体が水道部門の比重を低下させ多角化を進めているなどの理由により、EU水道セクターに強制的に競争を導入するかしないか、という選択肢が水道企業にとって重要性を失っていったと考えられる。しかし対外的にEUが市場開放を求め続けていることには注意を要する。