著者
大洞 智宏 渡邉 仁志 横井 秀一
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.260-263, 2013 (Released:2014-08-12)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

岐阜県西濃地域では,ナラ類の枯損による林冠ギャップ下であっても,植生の発達がみられない箇所が存在する。西濃地域は以前からニホンジカが生息し,生息密度も高いことから,シカの採食によって森林の更新が阻害されている可能性が考えられた。そこで,シカ柵を設置し,植生の変化を観察した。調査地は,岐阜県揖斐郡池田町のナラ枯れによって発生した林冠ギャップのうち4 カ所とした。シカ柵設置直後の各調査地の植被率合計は約6 ~23% であった。柵外の方形区では,シカの嗜好性の低いシダ類以外の植被率の増加はほとんどみられなかった。柵内の方形区では植被率合計は増加し(52~138%),特にキイチゴ類,ススキの増加が顕著であった。調査地4 では,表土流亡によって,実生の定着が妨げられている可能性が考えられた。高木性種は成長が比較的遅く,成長の早い低木生種などの下層に存在することが多いため,低木性種などが繁茂することにより,高木性種の侵入・生育が妨げられる可能性がある。これらのことから,この林分において,高木性種による速やかな更新を望む場合には,シカ柵を設置し,表土流亡の抑止や刈り出しなどの更新補助作業を実施する必要があると考えられた。