著者
大津 友美
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.45-55, 2007-09-30 (Released:2017-04-30)
被引用文献数
3

本研究はスピーチスタイルのシフトによる冗談に注目して会話を分析し,そのコミュニケーション特徴を明らかにする.分析の結果,第一に,会話において借り物スタイルへのシフトと丁寧体へのシフトの両方が冗談として行われるということが分かった.どちらのタイプのスタイルシフトも,話し手が当該の会話場面にはない要素(別人・他場面)を聞き手にイメージさせることによって,発話にユーモラスな意味を付与する.第二に,このような冗談を相互作用中に実現するための,会話参加者間の協力の仕方が明らかになった.本研究の音声データから,話し手は聞き手の注意を引くために(1)韻律操作,(2)スタイルシフト発話前のポーズによって合図を送ることがあるということが分かった.一方,相手の冗談に気付いた聞き手は,相手と面白みを共有していることを示すために同調することがあった.その際の聞き手の対応には,(1)笑いやコメント,(2)模倣,(3)共演,(4)対立の4つがあった.
著者
大津 友美
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.194-204, 2005-09-30 (Released:2017-04-29)

会話参加者たちは雑談を盛り上げるためにおもしろく話をしようとする.おもしろく語るための方法にはさまざまなものがあるが,その一つに,他人のことばを引用する際の直接話法の使用がある.しかし先行研究において,その現象に関しては言及するにとどまっており,その使用実態については明らかにされていない.そこで本稿では,ナラティブに注目して,20代の女性が親しい友人同士で行う雑談を分析する.そして会話参加者がどのように登場人物のことばを提示し,ドラマ作りをしているのかについて論じる.臨場感あるドラマ作りのために,会話参加者は韻律を操作することによって登場人物を演じ分け,談話構成によって相手に伝えたいメッセージを際立たせているということが分かった.さらに会話参加者のドラマ作りへの参加形態には(1)聞き手がドラマの観客として話し手を支援する場合と,(2)会話参加者双方が協力してドラマを共作する場合があるということが分かった.