著者
山下 真理子 田中 伸一郎 大瀧 純一 古賀 良彦
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.15-25, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
41

本研究は,外来受診中のうつ病患者を「職場関連群」と「非職場関連群」に分類し,精神状態と性格要因・環境要因との関連を検討することを目的とした。A大学病院精神科外来を受診したうつ病患者にHAM-D評価面接とY-G性格検査,診療録より背景調査を実施した。結果,HAM-D得点は,「職場関連群」1点から28点(mean±SD 13.5±6.6点),「非職場関連群」3点から29点(mean±SD 15.4±9.8点)。Y-G性格検査は,「職場関連群」でA型5名(38.5%),E型4名(30.8%),D型2名(15.4%),B型1名(7.7%),C型1名(7.7%)。またHAM-D得点とD抑うつ性,I劣等感に正の相関が見られた。 「職場関連性」のうつ病ではA型とE型が多く見られ,それぞれの環境への適応性を考慮すると,A 型は従来の休息と薬物療法を主とした介入で改善することが見込まれるが,元々不適応を起こしやすいE型は,劣等感を和らげるようなアプローチを含む認知行動療法等を積極的に行う必要性が高いと考えられた。
著者
岡田 洋二 首藤 亜紀 丘島 晴雄 吉澤 清良 大澤亜 貴子 紅林 佑介 大瀧 純一
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.107-114, 2013 (Released:2013-01-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

唐辛子の辛味成分であるカプサイシン(capsaicin,CAP)の抗酸化活性部位を特定することを目的に,CAPの主要骨格であるグアヤコール構造を有する3種化合物の抗酸化活性( kinh) を速度論的に比較検討した。また,CAP分子表面上の静電ポテンシャルエネルギーの最大値(maximam potential energy,MPE)を分子軌道計算で求めて同様に検討した。速度論的に求めたグアヤコール誘導体のk inh値は4.4×10 3 ~ 1.2×10 4 M-1sec -1で,CAPでは5.6×10 3 M-1sec -1とほぼ同じ値であった。また,グアヤコール骨格を持たずCAPのacetamide部位を有するN -benzylacetamideには抗酸化活性が全く認められなかったことから,CAPの抗酸化活性を有する部位はグアヤコール骨格部分のフェノール性水酸基であることが推測された。この結果は,CAP分子表面上のMPEを分子軌道法に基づいた計算の結果からも確認することができた。以上,速度論的研究と分子軌道法に基づいた計算結果より,CAPの抗酸化活性部位はそのフェノール性水酸基であることが強く示唆された。
著者
大瀧 純一
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.589-602, 1992-12-31 (Released:2017-02-13)

N-isopropyl-p-〔^<123>I〕-iodoamphetamine (IMP)を用いたSingle photon emission computed tomography (SPECT)を健康成人14名,単極性うつ病患者22名に施行し,小脳に対する脳内各部位の平均IMP集積カウント比を求め,局所脳血流量とした。うつ病患者ではうつ病治療期およびうつ病寛解期にSPECTを施行し,以下の結果を得た。1.うつ病治療期の局所脳血流量は前頭葉,頭頂葉,側頭葉,基底核,後頭葉の各部位で健康成人と比較して有意に低下し,平均脳血流量も有意に低下していた。2.うつ病寛解期の局所脳血流量は健康成人と比較して各部位で正常化ないし増加していたが,平均脳血流量での有意差は認められなかった。以上のことから,単極性うつ病においては脳血流低下が抑うつ症状の改善に伴って正常化し,脳血流の異常はstate dependent markerであることが示唆された。