著者
小林 治
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.25-30, 2014 (Released:2014-04-01)
参考文献数
54

近年の分子生物学的研究によると,概ね宿主細胞の遺伝子損傷は癌化を誘導することが判明し,ときに感染症の関与も報告されている。発癌機構の基礎研究成果は,癌撲滅ツールとしての抗ウイルス・抗菌療法,ワクチン接種などの価値を期待させる。
著者
大木 紫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-25, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
12

男女は身体的,行動的に異なる傾向を示すが,この違いは遺伝子のみでは決定されない。ホルモンなどの生物学的要因は男女の身体的特徴を発現させ,また大脳半球,扁桃体,海馬など,多くの脳部位で男女差を形成する。これに伴い,男女は行動学的にも多くの違いを示す。しかし全体的な優劣というより,能力パターンに差があることを示すようである。更には,社会的,認知的,情動的要因も男女差に影響を与えると考えられている。しかし,脳や行動における男女の差異は平均を見た場合にわかる程度のものであり,個体差によるばらつきを考えると重なる部分も多い。
著者
松田 元 吉永 明里 白土 みつえ 山内 格 高橋 康一 中村 幸雄 鈴木 正彦
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.417-424, 1989-12-30 (Released:2017-02-13)

われわれは子宮脱の手術術式として主として膣式子宮全摘出術と前・後腔壁縫縮術を施行している。今回,子宮脱手術症例52例にアンケート調査を行い,回答を得た43例に対して術後長期予後に関する検討を行い,次の知見を得た。1)37例は,脱垂状態が改善したが,膣壁の膨隆といった極く軽度のものを含めると6例が再発を訴えた。2)排尿異常を訴えた36例中29例は改善し,残り7例は術後も症状の持続を訴えたが,うち5例は経過観察のみで症状は消失した。3)術後新たに3例が尿失禁を訴えた。4)性交障害を訴えた6例中2例は改善し,2例は症状が持続し,2例は無回答であった。5)術後後遺症として新たに2例が性交障害を訴えた。以上から大半の症例は術後予後はほぼ良好と思われるが,尿失禁,脱垂の再発,あるいは性交障害等,術後障害を残す症例も認められ,手術術式に関して若干の改善の余地があるものと思われた。
著者
萬 知子
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.35-38, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
13
著者
藤原 究
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.39-41, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
7
著者
古川 誠志
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.77-79, 2016 (Released:2016-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

米国では40年前と比べて35歳以上の初産婦の数は9倍増加した。一方本邦では35―39歳階級の出生率増加が他の年齢階級と比べて著しい。このような高齢出産の増加は女性の高学歴化とそれに伴う社会進出に加え,近年の生殖補助医療の発達が高齢女性の妊娠率を上昇させたことも影響している。さて,高齢出産には種々の問題がつきまとう。 妊娠中に起こる産科合併症のほとんどが年齢依存性に上昇する。高齢妊娠だと妊娠初期の流産率が上昇する。これには加齢による卵巣機能や子宮機能の低下とダウン症候群を始めとした染色体異常の頻度が増すことが関与する。実際,40歳で単胎妊娠の場合,児がダウン症候群となるリスクはおよそ1/100であり,これは20歳でのダウン症の発症リスク(1/1700)に比べて著しく高い。また妊娠糖尿病,妊娠高血圧症候群,前期破水,切迫早産,前置胎盤,常置胎盤早期剥離や胎内死亡といった産科合併症も年齢依存性に発症頻度が上昇する。更に高齢では慢性高血圧症や2型糖尿病,肥満などの内科合併症を持つ女性の頻度も増加し,妊娠中の内科合併症の悪化や妊娠高血圧症候群などの産科合併症が高率に出現する。これらは医原的な早産出生を余儀なくされる。このように高齢妊娠では母体の罹病率の上昇のみならず胎児の罹病率も上昇させ,双方の健康障害が危惧される。当面晩産化傾向は続くために,妊娠に伴う母児双方の諸問題を広く認知させ,個人レベルでも対策を講じる必要がある。
著者
八木橋 宏勇
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.43-49, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

女性と男性を区別しない社会はない。世界には約5,000もの言語があると推定されているが,女性と男性を区別しない言語もないと考えられる。言語は社会の有り様を映し出す鏡であり,両者は常に相互作用しているからである。長く,生物学的にも,文化的にも,両性は異なる社会的役目を担い分業を営んできた。それは言語にも反映されている。一方で,言語を意識的に変えることで,社会に変革を迫ることも可能だと思われる。本稿は,言語現象に垣間見られる女性と男性の姿を社会言語学の観点から紹介するとともに,医療の現場で女性医師のコミュニケーションスタイルが患者の予後に望ましい影響を与えている可能性を指摘する。
著者
渡邊 交世 岡田 アナベルあやめ
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.253-257, 2018 (Released:2018-10-03)
参考文献数
4

膠原病にはドライアイを始め強膜炎やぶどう膜炎,網膜病変など様々な眼障害が合併する。眼病変が膠原病の診断の手がかりとなることや,逆に眼病変から膠原病が疑われ診断に至ることも日常診療で経験され,症例を巡り他科と協力して診断・治療を進めていく場面も多い。ここでは,膠原病に関連する眼合併症としてどのようなものがあるか,また治療や経過について眼科の観点から述べさせていただく。
著者
下島 裕美 蒲生 忍
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.2-7, 2009 (Released:2009-09-11)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本稿では,ワシントン大学のマコーミック博士が杏林大学において実施したGuided Death Experienceという課題を紹介する。GDEはワシントン州の大学や病院,ホスピス等で広く実施されている課題である。まず五色のカードを5枚ずつ計25枚用意し,1枚のカードに1つずつ「大切なもの」「大切な人」「大切な場所」「大切な目標」「普段大切にしている出来事」を記入する。そして「あなた」が死にゆく物語を聞きながら大切なものが記されたカードを投げることにより,死にゆく過程における喪失を疑似体験するものである。本稿では,これまでとは異なる時間的展望への気づき,本当に大切なものへの気づき,他者との関係性の中に織り込まれた自己への気づきという視点からGDEのデス・エデュケーションとしての可能性を考察する。医療系の専門教育においては,死にゆく過程における患者やその家族へのサポート意識の高まりとともに,燃え尽き症候群から医療関係者の心を守るという役割も期待される。
著者
平岡 厚
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.17-26, 2012 (Released:2012-09-30)
参考文献数
40

今日,特定健康保健食品ではない種々の水製品が,含有成分の作用あるいは水分子の物性の変化を根拠に,「飲むと健康に良い」という種類の宣伝を伴って販売されている。筆者らのグループは,それらのうち,「有害な活性酸素を消去する成分が含まれており,体内で抗酸化作用を示す」とされているもの及び「水分子のクラスター・サイズが普通の水よりも小さく,水のbioavailabilityが大きいので,生体組織への吸収率が高い」とされているものを各々数点選び,試験管内の諸物理化学的性質および健常者における飲用効果を検討した。当該研究において検討した諸検水は,前者については,いずれも試験管内では一定の抗酸化作用を示したが,飲用による健常者の酸化ストレスの有意な低減は検出されず,また,後者についても,水分子のクラスター・サイズを規定する水素結合における普通の水との差異は観察されなかった。これらの水製品は,製造・販売に当り,宣伝内容と実態が乖離していると考えられた。
著者
渡邊 衡一郎
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.27-29, 2020-03-30 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

2018年,ついに「公認心理師」が始動した。これまで主であった「臨床心理士」は認定協会による認定資格であり,心理分野における待望の国家資格の誕生である。精神科医は当事者をとかく現症などから横断的に捉えがちである一方で,心理師は心理テストなどの技法を駆使し,縦断的に捉える。心理師からの情報は,我々精神科医が目の前の当事者について,より奥行きを持って捉え,正確な判断を行うための一助となっている。現在の精神医療において,当事者からの精神療法へのニーズは増しているが,限られた時間の中で医師がその全てに応えることは難しい。そこで心理師の出番であるが,認知行動療法が「看護師」が行った場合にのみ保険上算定されて来たことからも分かるように,心理師達の労力に対して,これまで適切な対価が支払われてこなかった。今後,「心理師」が国家資格となったことで認知行動療法を初めとする心理師達が行う精神療法が算定されるようになれば,これまで以上に様々な治療法を呈示することが可能になると考える。認知行動療法などの精神療法の実施,リサーチアシスタントなど,医療施設における心理師の活躍の場は多岐に亘る。国家資格化を機に,これまで以上に精神科医と心理師が密に連携することで,より当事者のニーズに応えることが可能となり,ひいては臨床の質の向上につながることが期待される。
著者
若林 進
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.285-289, 2015 (Released:2015-12-26)
参考文献数
6

東日本大震災以降,災害医療における薬剤師の活躍の場が広がったとされている。処方薬の提案や,薬剤の鑑別,支援物資の仕分け,保管・管理など様々な場面で,薬剤師が活動していた。そしてその医薬品を鑑別する際や,供給する際に,お薬手帳が活用されていたのも事実である。医薬品の備蓄・供給について,災害発生直後~3日目くらいまで,それ以降や,さらに避難所生活が長期化する場合では需要が異なってくる。厚生労働省大規模災害時の医薬品等供給システム検討会がまとめた医薬品リストと,2015年9月に発生した関東・東北豪雨災害でJMAT茨城が携行した医薬品を紹介する。また,災害時における後発医薬品に関する一考察を紹介する。
著者
新井 治美 川原 延夫 上島 国利 福田 和夫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.23-29, 1981-03-30 (Released:2017-02-13)

最近5年間に杏林大学および三恵病院に入院し, 宗教を主題とした妄想が認められた20名の精神分裂病者について, 現代日本の社会宗教的状況を考慮に入れつつ検討を加えた。20名を信者グループと非信者グループに分けると前者では急性に発症し, 妄想も一過性であるのに対し, 後者では慢性の経過をたどり, 妄想も持続する傾向が認められた。そこで前者のようなタイプを急性型, 後者を慢性型とし, 後者についてはさらに宗教的妄想以外の妄想の有無に従い単一型と併存型に分けた。急性型の多くは憑依状態を呈し, 憑いたとされる対象は多岐にわたっていた。神という言葉でいろいろな宗教的対象が表現されていて, それを教派別にみると新宗教がもっとも多く, キリスト教がついで多かった。慢性型においては宗教は患者にとってそれほど重要な意味は持たないが, 急性型においては宗教に対する患者のかかわり方は全人格的であるという傾向が認められた。
著者
大木 紫
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-25, 2018

<p> 男女は身体的,行動的に異なる傾向を示すが,この違いは遺伝子のみでは決定されない。ホルモンなどの生物学的要因は男女の身体的特徴を発現させ,また大脳半球,扁桃体,海馬など,多くの脳部位で男女差を形成する。これに伴い,男女は行動学的にも多くの違いを示す。しかし全体的な優劣というより,能力パターンに差があることを示すようである。更には,社会的,認知的,情動的要因も男女差に影響を与えると考えられている。しかし,脳や行動における男女の差異は平均を見た場合にわかる程度のものであり,個体差によるばらつきを考えると重なる部分も多い。</p>
著者
相沢 忠一
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.89-98, 1973-06-30 (Released:2017-02-13)

ひとくちに医学英語といつても, 意味するところは広範にわたるが, 少なくとも専門語いに関しては, ラテン語とギリシャ語によつて支配的な影響を受けていることは論をまたない。この調査は, 極く基本的な医学用語, すなわち身体の主要な部分または器官を表わす用語について, 本来の英語とラテン語とギリシャ語の三者の関連において, 整理・確認しようとするものである。(その1)は, まず基本語いをアングロ・サクソン系の英語によつて見出し語として掲げ, それに相当するラテン語とギリシャ語を併記して, 両古典語から派生した形容詞, 造語要素たる連結形, および連結形を応用した若干の術語例, 等を表示したものである。原語については, できるだけ語源にまつわる資料を呈示するように努めた。このつぎからは, 同様の作業をアルファベット順にwombまで継続したあと, ラテン語・ギリシャ語が, どのような経緯を経て医学英語の語いを支配するようになつたかを, 歴史的に概観して, まとめとする。
著者
石田 均
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.163-165, 2016 (Released:2016-12-27)
参考文献数
7
著者
高山 レイ子 牧内 洋子 松葉 美佐子 森田 耕司 志賀 鑑時
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-19, 1978-03-30 (Released:2017-02-13)

日常よく用いられる15種の培地について,酸化還元電位(Eh)と浸透圧を測定した結果次のような成績を得た。細菌を接種せず培養条件を変えたとき,培地の種類に関係なく,Ehは好気条件では+0.3V前後を示し,嫌気条件では低下を示したが,いずれの培地でもマイナスのEhは測定されなかった。細菌を接種した後では培地の種類,培養条件・菌の増殖によりEhの変動に一定の傾向が認められた。また各培地の浸透圧はTCBS, BTBティポール,スタヒロ110培地でそれぞれ,700,900,2300mOsm/lと高い値を示したが,その他の培地ではヒトの体液に近い250〜300mOsm/lの浸透圧を示した。