著者
鈴木 喬 内海 英雄 川端 成彬 大矢 晴彦 大垣 真一郎 佐藤 敦久
出版者
山梨大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究は,質的に安全かつ健康な飲料水を確保するため,近年ますます問題となってきた水道水中の細菌,ウィルス,臭気,硝酸イオン等の有害成分を殺菌あるいは除去するための高度の改善技術を創製しようとするものである。1.ウィルス指標としてのバクテリオファ-ジとオゾンによる不活化 ウィルス制御技術の開発に当たっては,各種病原ウィルスの消毒手法に対する感受性の相違を十分考慮にいれなければならない。このためには,不活化効率を精確に定量できる「基準となるウィルス」が必要であり,また,そのウィルスはその使用が容易で安全なものであることが求められる。「基準となるウィルス」として,RNA大腸菌ファ-ジ(QB)を活用可能であることを見出した。また,オゾンによるQBの不活化では,5sec以内の急激な不活化の後反応がほぼ停止するように見えるが,ある一定のQB濃度で反応が止まるのではなく,一定の不活化率に達して止まることが観察された。2.細菌・ウィルス用非塩素殺菌剤の開発本殺菌法はイオン交換膜電気透折法において限界電流密度(Ieim)以上の高電流密度電気透折時に起こる中性攪乱現象を逆に活用し,生成した酸であるH^+イオンと塩基であるOH^ーイオンの相乗作用により水中の大腸菌を殺菌せんとするものである。0.1MーNaCl水溶液に大腸菌を10^81cm^3の濃度で懸濁させた試料水について殺菌効果と中性攪乱現象の関係を検討した結果,Ieim(0.81Adm^2)の約1.6倍である1.35A/dm^2の条件では透折開始7分前後に採取した処理液から生菌率は0%であり完全に殺菌されていることが判明した。すなわち,この結果は中性攪乱現象が起きる高電流密度領域で透折した場合にのみ強力な殺菌効果が得られることを示している。