- 著者
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大矢 繁夫
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.3, pp.1-9, 2008-12-11
商業銀行は、その本質的機能である信用創造によって、資産と負債の両側を同時に膨張させる。そのとき、やがて劣化が必然であるような資産も抱え込む。このことは避けられない。資産劣化は事後に判明するからである。劣化が必然的な資産とは、バブル的に価格上昇した資産やそれを担保にした貸出し等である。銀行の信用創造は、どこまで厳格な資産審査をできるかにもよるが、上のことを避けられない。信用創造は、銀行資産の「架空」化をもたらさざるをえない、という認識である。以上の認識を前提に、本論文では、まずドイツの銀行の信用創造能力の高まりを追った。銀行の信用創造能力を高めるのは、現金取引の縮減であり、それをもたらすキャッシュレス・ペイメントの進展である。まずこの状況を追った。次いで、ドイツの銀行は高められた信用創造能力によって、「架空」資産をいかに抱え込んだかを把握しようとした。銀行は「架空」資産の抱え込みに慎重でありうるとしても、それを完全には回避しえない。そうであるならば、金融当局は、そのことをどのように認識し、対応しようとするのか、最後にこの問題を検討した。