著者
大神 智春
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.47-61, 2017 (Released:2019-04-26)
参考文献数
21

中国語母語話者および韓国語母語話者を対象に,多義動詞「とる」で形成されるコロケーションの習得について調査した。まず(1)日本語母語話者が認識する「とる」の意味体系を整理した。次に(2)学習者が考える「とる」のプロトタイプ,(3)「とる」で形成されるコロケーションの理解について調査・分析した。その結果,(1)母語話者が考える意味体系と辞書的体系はおおよそ一致するが一部相違が見られる,(2)学習者と母語話者が考えるプロトタイプにはずれが見られ,学習者は独自の意味体系を構築していると考えられる,(3)学習者は多義性についてある程度習得するが,共起語として使用できる語の範囲は広がりに欠ける。各コロケーションの用例を「点」として習得し,習得した知識は「面」として広がりにくいことが示唆された。