著者
田中 弘敬 宝示戸 貞雄 大竹 茂登
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.184-188, 1971-10-29

オーチャードグラス育種における早期検定を有効にするため,幼苗期および成体期の諸形質の関係を明らかにしようとした。前報で供試した材料を幼苗試験終了後本圃に70cm×80cmの個体値えとして定植し,個体ごとの生草重,草丈,茎数多少などの諸形質を2年間にわたり調査した。1.幼苗期12形質と成体期時期別生草重との重相関係数は一般に,あまり大きくはなかったが,品種群をこみにした場合,長日区で2年間生草重と0.56の有意な相関が得られた。年については利用1年目,2年目とも全体としては類似の傾向であったが,重相関係数の値そのものは2年目の方がやや小さくなった。処理の比較では長日,対照,短日の順で,幼苗期に長日処理をおこなった区が重相関係数が大きかった。品種群についても差がありそうでとくに地中海産のものの値が大きかった。2.幼苗期9形質と成体期諸形質(生草重以外)との第1正準相関係数は0.6〜0.8でやや大きかったが,第2,第3正準相関係数は,次第に小さくなった。やはり幼苗期に長日処理をおこなった区が正準相関係数も最も大きい傾向があった。品種群については,地中海産のものが第1正準相関係数は他群に比べ大きかったが,第2および第3正準相関係数でははっきりしなかった。3.幼苗期諸形質の中では葉長および草丈が成体期諸形質との関係が最も深いがその他の幼苗期形質は関係がごくうすく,当面,これらの形質が重要であることが判った。
著者
大竹 茂登 田中 弘敬 宝示戸 貞雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.241-246, 0000

オーチャードグラスの育種における早期検定の可能性についての知見を得るため,産地および採種年次を異にするオーチャードグラス4群8品種系統を1967年5月と8月の2回にわたり播種し,それぞれ短日区(自然日長8時間),長日区(自然日長8時間に補助光朝夕4時間ずつを加え計16時間)および対照区について幼苗期の形質発現の調査を行なった。1.幼苗期においても日長効果は大きくあらわれ,長日では葉が伸長するが,出葉間隔および分げつ出現間隔は長くなり,したがって葉数,分げつ数が少なくなった。短日ではその逆であった。しかし地中海産のPortugal2倍体だけはこの傾向がむしろ逆で,短日でもよく伸長する品種である。2.幼苗期の調査項目としては,葉長(または草丈),総葉数,総分げつ数が調査が容易な点からも適当と考えられる。葉幅も日長の影響は少ないが,品種間差は明らかであり,重要である。3.採種年次の古い種子では生育がおとる例が見られ,あらかじめ種子の活力の検査が必要と認められる。4.以上の結果を総括して考えると,幼苗期に一定時間の日長条件を与えることは,品種間差の検出を容易にし,試験の再現性もあるようなので,早期検定の条件として利用できそうである。