著者
阿久津 克己 大胡 佳子 奥山 哲
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.521-529, 1985-12-25

ネギさび病菌 (Puccinia allii) を接種した4品種のネギ葉部葉肉細胞で, 微細構造的に異なる成分を含むパピラが観察された。パピラ成分はさび病菌の葉肉細胞への侵入前後で異なった。侵入前もしくは侵入時のパピラでは繊維性成分だけが観察されたが, 侵入後のパピラでは繊維性成分の外に非繊維性成分が観察された。非繊維性成分は吸器頸部の周囲でよく見られ, 時々吸器本体部周辺でも観察され, その出現は吸器形成と密接な関係があると推察された。パピラ形成以前の侵入に対する葉肉細胞内の反応を電顕レベルで調べた。吸器母細胞と接した葉肉細胞で, 細胞膜の陥入, 細胞質の凝集がしばしば認められた。細胞膜の陥入で発達した paramural space (細胞壁・細胞膜間隙)で, 細胞膜あるいは小胞体と連絡した管状もしくは小胞状の器官が集積し, その付近には繊維性物質が観察された。パピラ周辺の繊維性物質と隣接した小胞状器官も観察され, パピラ形成にこれらの器官が関与することが示唆された。