著者
岩田 徳余 三木 伸悟 秋山 今日子 岩永 優斗 神先 芽衣 田中 聖晃 大谷 祐介 真下 忠久
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.735-739, 2020-12-20 (Released:2021-01-20)
参考文献数
17

症例はマルチーズ,避妊雌,4歳齢で急性の発咳を呈し来院した.各種検査から外傷性横隔膜ヘルニアを疑い,外科手術を実施した.手術時の所見は,横隔膜に欠損はなく,肝臓内側右葉が大静脈孔を介して胸腔に連絡していた.先天性大静脈孔ヘルニアと診断し,血流を確認するため,術中に造影CT検査を実施したところ,胸腔内に脱出した肝臓へと連絡する肝静脈,門脈が認められた.脱出した肝臓を温存するため,整復手術を実施した.術後87日目に実施した造影CT検査では整復した肝臓は正常位置に存在しており,同時に肝生検を実施したところ組織学的にも正常であった.横隔膜ヘルニアの鑑別診断として大静脈孔ヘルニアを考慮し,腹腔内に完納するのか肝葉切除を実施するのか決定するために,術前の造影CT検査が重要であると考えた.