著者
大野 岳史
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.75-98, 2014

スピノザは『神学政治論』で迷信を批判し、迷信に陥ることのない仕方での聖書解釈を試みている。そのためには預言と迷信が区別されなければならない。預言と迷信はどちらも想像という認識様式によって把握されている点では共通している。そして想像は誤謬の原因となるのだが、それにもかかわらず預言は確実な認識であると言われる。この確実性は、預言者が活発に想像し、預言の徴証が与えられており、また預言者が正しいことと善きことに向かう魂をもっていることに支えられている。預言者は神からの啓示であることを確認するための徴証と出会うことで、預言について確証することができる。これに対して迷信に囚われている人々は自然的原因について無知であるにもかかわらず「超自然的な事柄だ」と判断してしまう。「神即自然」であることを理解し、理解不可能な事柄については無知であることを認め判断を控えることが、迷信に陥らないために求められるのだ。