著者
田中 美穂 渡辺 靖之 大野 慎介 田丸 貴臣 手嶋 紀雄 酒井 忠雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.291-296, 2004 (Released:2004-09-13)
参考文献数
20

コバルト(II)による鉄(III)の還元反応は,2-(5-ニトロ-2-ピリジルアゾ)-5-(N-プロピル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール(nitro-PAPS)の共存下,pH 3.5の条件で進行する.この反応の生成物である鉄(II)-nitro-PAPSキレートは,790 nmに鉄(II)キレート特有の吸収極大を有する.したがって,この錯体の吸光度を測定することにより,コバルト(II)の吸光光度定量が可能である.この酸化還元反応を2流路のフローシステムに導入したところ,コバルト(II)2.5×10-7~1.0×10-5 Mの範囲で直線性の良い検量線が得られた.コバルト(II)の検出限界(S/N=3)は1.0×10-7 Mであり,2.5×10-6 Mのコバルト(II)を10回繰り返して測定した際の相対標準偏差は0.3% であった.1時間当たり約70検体のサンプル処理が可能である.本法は,コバルト合金(NIST SMR 862; High Temperature Alloy L 605)及びリョウブ(NIES標準試料No. 1)中のコバルトの定量に応用され,良好な結果が得られた.更に本法により市販医薬品中のコバルトを定量し,間接的にビタミンB12を測定することができた.