著者
大野 敬代
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.88-96, 2005-03-30 (Released:2017-04-30)

シナリオ談話104話を用い,待遇コミュニケーションとしての「ほめ」の応答の考察をした.受け入れ型,否定型,回避型の三種のうち回避型が圧倒的に多い理由には,お世辞への疑いなど「ほめ主体」の意図を量りかねることにも関連があると考えた.そこで,「ほめ」自体が意図の場合(「ほめ意図」)と,「ほめ」てはいるものの別の意図が中心となる場合(「別意図」)とに分け,配慮を要する目上への応答型を調査すると,「別意図」の応答傾向に特微がみられた.さらに「別意図」ごとに応答傾向を調べた結果,受け入れられやすい順は,1「ほめられ主体」への利益が期待される依頼・要求,叱り・励まし等,2 話題転換,3 「ほめ主体」への利益が期待される依頼・要求,4 皮肉・からかいであった.この「受け入れ度」の順は,「別意図」による利益や機能と密接に関わっている.「ほめられ主体」の自己利益に関する感じ方は「ほめ」を受け入れる強い要因になっていると考えられる.