著者
大野 泰一郎 永田 豊 長坂 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.8-17, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
19

煎じ薬を保管中に生じる生薬の色調変化は,服薬コンプライアンスを妨げる要因の一つとなる。滑石を含む煎じ薬に五苓散料を合方した後に,滑石が鮮やかな青色(鮮青色)を呈した例を経験し,気密容器を用いた原因生薬検討とTLC による成分分析を実施した。その結果,桂皮と白朮共存下,滑石は数時間で鮮青色を呈し,この呈色には,桂皮・白朮・滑石の3生薬に由来するcinnamaldehyde とatractylon,ケイ酸アルミニウムが関与していた。今回確認された桂皮と白朮共存下における滑石の鮮青色への呈色は,発色が顕著で数時間で生じる鋭敏な反応であり,服薬コンプライアンス維持の観点から,桂皮・白朮・滑石を含む煎じ薬投薬時には,滑石の呈色について患者に十分に説明し,呈色を避けるには滑石を別包とし他生薬と隔離保管,煎じる際に混合する方法が有効と考えられた。