- 著者
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大高 文男
- 出版者
- 公益社団法人 日本畜産学会
- 雑誌
- 日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.3, pp.226-232, 1962 (Released:2008-03-10)
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
-
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16頭の豚で,枝肉の各部位(1~7と呼ぶ)の電気抵抗値(単位Ωははぶく)を測定し,次のような平均値を得た.部位1(腿の切断されて露出している肉面)1931;2(背肉の腿に近い部分)2334;3(背肉の肩に近い部分)1683;4(肩肉の上部)1918;5(肩肉の下部で前肢に接する付近)1363;6(下腹部の中央の肉面)17667(横隔膜筋)1628.部位2と部位3,5,または7との間には,5%水準で電気抵抗値に有意差が認められた.肉の電気抵抗値は,部位および個体によつて差があるが,死後における経時的変化の様相は同じである.死後は,最初急激に低下するが,まもなくゆるやかに減少していく.この間一時,平衡または増加の傾向を示すが,これは,酸溶性燐酸化合物およびpHの変化とも考えあわせると,死後強直の時期と思われた.赤血塩還元法で遊離SH基の量を測定した.最初の間は肉蛋白質の変性による遊離SH基の量の増加よりも,他の還元性物質の減少が大なるため,測定値は急激に減少して行き,この期間における電気抵抗の変化と同じ様相を示した.その後,蛋白質の変性にともない,遊離SH基が増加するに従つて,この値は増加するようになるが,この時期はいわゆる初期腐敗の時期と思われた.一般に応が腐敗して来るに従い,電気抵抗は,各部位でたがいに似た値を示すようになる,しかし,いわゆる初期腐敗と思われる時期の値は,部位によつて幾分異なるようであつた.