著者
天川 淑宏
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.50-55, 2021-03-25 (Released:2021-04-02)
参考文献数
6

ヒトは,多様なストレスに対する抵抗力を備えもち健康な状態を維持している.しかし,加齢などにより身体的,精神心理的,社会的な側面からストレスに対する予備能力が虚弱な状態へと陥ってしまうことをフレイル(Frailty)という.また,Frailtyには,早期に適切な栄養や運動の介入によって健康に戻る可逆性のあるreversibilityの意味も含まれている.その中で身体的フレイルに関しては,サルコペニアとの関連が高いとされ,加齢のほかに低栄養,活動量の低下,さまざまな疾患などが原因である.私が臨床で携わる糖尿病患者は,内科的問題のみならず運動器疾患(ロコモティブシンドローム)を合併していることが多く,エネルギー消費を目的とするための運動だけでなく「痛み」という不定愁訴が糖尿病患者に多くあることを知り「動けないカラダと動きたくないココロ」を「動きたくなるカラダと動けるココロ」へと導くことが,糖尿病やフレイルからの脱却に対する運動療法の役割であるといえる.その運動療法は,骨格筋が内分泌器官であるという捉え方が根拠にある.その具体的な実践への取り組みを含め紹介する.