- 著者
-
茂木 積雄
天木 秀一
- 出版者
- 日本大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
原発性胆汁性肝硬変(PBC)に特徴的な抗ミトコンドリア抗体(AMA)亜型である"M2"抗体はミトコンドリア内膜に存在する酵素である2-oxoacid dehydrogenase complex(2-OADC)ファミリーに属するpyruvate dehydrogenase(PDC),branched chainα-ketoacid dehydrogenase complex(BCOADC),2-oxoglutarate dehydrogenase complex(OGDC)を構成する5つのsubunit enzymes(PDC-E2,BCOADC-E2,OGDC-E2,protein X,PDC-E1α)を特異的に認識する。分子生物学的および遺伝子工学的手法を用いた研究により,M2抗体が認識する主要なミトコンドリア抗原であるPDC-E2,BCOADC-EおよびOGDC-E2上のlipoic acid binding resionであるリポイルドメイン上に主要な抗原エピトープが各々存在することが明らかになった。これらのエピトープマッピングの成績に基づき高感度AMA測定法の確立を試みた。すなわち,PDC-E2,BCOADC-E2およびOGDC-E2の各々のリポイルドメインをコードするcomplementary(c)DNAを同一のプラスミドベクターにサブクローニングすることによりHybrid cloneを確立した。Hybrid cloneおよび各々のE2 component cDNA cloneによって発現されたリコンビナント抗原をグルタチオンアガロースビーズを用いてアフィニティー精製した。イムノブロット法による検討で,これらの精製リコンビナントミトコンドリア抗原はPBC患者血清と特異的に反応し,自己免疫性肝炎やC型慢性肝炎などの対照疾患および健常人血清などとは反応しなかった。また,PBC 112例においてラット腎胃組織切片を抗原とした蛍光抗体法(IF)および市販の酵素抗体法(ELISA)によってAMAの検討を試みたところ9例はAMA陰性であったが,リコンビナントミトコンドリア抗原を用いた検討によってPDC-E2以外のM2抗原とのみ特異的に反応するPBC血清を明確に検出することが可能となった。