著者
吉原 博夢 佐野 恭章 天田 拓麻 朝倉 俊成 北川 幸己 浅田 真一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.179-187, 2016-04-30 (Released:2016-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬をはじめとする自己注射製剤は,患者自身が注射を行うため,製剤内への血液混入が起きることがある.しかし,自己注射製剤への血液混入による影響については詳しく報告されていない.そこで代表的な自己注射製剤に血液を加え,製剤中の有効成分に対する影響を検討した.その結果GLP-1受容体作動薬では大きな変化が見られなかった一方で,多くのインスリン製剤では沈殿形成と時間依存的な濁度上昇が見られ,特に超速効型の製剤では短時間で生じる傾向にあった.さらに,沈殿物はインスリンとヘモグロビンを含有しており,沈殿が生じたインスリン製剤ではインスリン濃度が有意に減少していた.以上の結果,血液を混入させないように血管を避けることや,血液が逆流しないよう適切な注射手技を患者に指導する必要があることが示された.また,血液を逆流させない製剤上の工夫も求められる.