著者
天羽 正継
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.206-225, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
28

本稿の課題は,戦時期に資金計画の一環として形成された地方債計画が,終戦後にどのような経緯を経て,戦後のわが国の地方債制度を支えるシステムとして再形成されることとなったのかを明らかにすることである。戦時期には国家資金計画による地方債計画の下,地方債の全額が政府資金によって引き受けられた。終戦後に戦時期の地方債計画は撤廃されたが,政府資金がインフレにより蓄積不足が続いたため,一部の地方債が民間資金によって引き受けられることとなった。ところが,地方債の消化が困難をきわめたため,大蔵省と日銀により計画的な消化を図る政策が展開されることとなった。こうした過程で大蔵省は,民間資金と政府資金による引受量を把握しつつ,新たな起債許可権限を用いてそれらに見合うように地方債発行額を調整することが可能となった。こうして,終戦後に撤廃された地方債計画は新たな装いをもって復活し,戦後に引き継がれることとなったのである。