著者
太田 千鶴子 近藤 明子 小林 重雄
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.91-104, 1979-09-30

本研究の目的は1対1の行動療法的訓練において,改善されにくいとされていた児童対児童の相互作用,遊びに必要なルールの理解を通じて集団遊びを形成することである。集団は「ことばのおくれ」,「他児と遊べない」を主訴とする児童6名で構成されている。対象児は自閉症と診断された3名である。目的を達成するために(1)つなひき,(2)電車ごっこという課題が設定された。第一期では,動作模倣,第二期では,かけっこ,つなひき,サーキット,第三期では,つなひき,電車ごっこを中心プログラムとした。1セッションは各課題とフリープレイから成っている。セッションは週1回,20〜30分で計19回行なわれた。これにより,次のような結果が得られた。1 動作模倣 3児とも達成率が増加し,特にT児は第7〜13セッションにおいて著しい伸びを示している。2 つなひき 次のようなルールの理解度を検討した。(1)合図を守る(2)後方へ引く(3)終点がわかる(4)勝ち負けがわかる(5)応援する。Y児はどのルールも理解できていない。T児は,どのルールもほぼ完全に理解可能となり,K児はルールの(1)〜(3)のみ確実に理解できた。3 電車ごっこ 3児ともお客さん,運転手,駅長などの役割を達成し積極的に参加できるようになっている。