- 著者
-
坂野 朝子
武藤 崇
酒井 美枝
井福 正貴
- 出版者
- 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
- 雑誌
- 行動療法研究 (ISSN:09106529)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.123-138, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
- 参考文献数
- 35
- 被引用文献数
-
2
本研究の目的は、慢性腰痛患者(40歳代・女性)に対するアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の治療プログラムの効果を検討することであった。プログラムは全10回であり、ABデザインにより、患者の価値に基づく活動や生活の質に及ぼす効果を調査した。その結果、患者の価値に基づく活動が増加した。また、SF-36の全体的健康感、活力、役割機能(精神)、心の健康の得点がプログラム終了後に増加し(RCI=3.23, 4.84, 2.08, 2.12)、身体機能の得点が4カ月後フォローアップに増加した(RCI=2.89)。さらに、腰痛による生活障害度を測るRDQの得点も減少した(RCI=2.97)。そのほか、痛みに対する破局的思考、不安や抑うつ、ACTのプロセス指標の得点も有意に改善し、4カ月後フォローアップまで維持した。これより、ACTの治療プログラムは、この慢性腰痛患者の痛みや痛みに関する思考・感情が行動に及ぼす影響を低減させ、機能的な活動を増加させることに有効であったと考えられる。