著者
太田 晴美
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌医科大学札幌保健科学雑誌 = Sapporo Medical University Sapporo journal of health sciences (ISSN:2186621X)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-6, 2020

災害医療の歴史的変遷を紐解き,近年の災害医療実践例から,管理・経営的側面からその学びと課題について述べる。阪神淡路大震災では,後方支援の重要性と心のケアの必要性が明らかになり,有珠山噴火では病院同士が連携する創意工夫があった。東日本大震災では,平時も有事も「安全」と「安心」を提供する重要性がわかった。熊本地震では高齢者や福祉施設に対する支援体制等を構築する課題が明らかになった。北海道 胆振東部地震では医療者自身に正常性バイアスがあった。また、SNS活用は情報伝達がスムーズになる一方,善意のデマ拡散というデメリットがあり,情報ツールを活用する力が求められた。2019年台風19号では,予測できる気象災害に対し,人々がどのように備え,対応するかが問われ,災害モードの切り替えが重要 と再認識した。医療機関の備災力向上のためには,マニュアルだけでは補えず,どのようにマニュアルを使っていくかが重要である。