著者
堀田 紀文 奈良 康平 小田 智基 鈴木 雅一
巻号頁・発行日
no.123, pp.17-32, 2010 (Released:2011-07-26)

降雨が土壌中二酸化炭素(CO2)濃度及び土壌呼吸速度に与える影響を調べるため、2008年5月(降雨イベント1)と9月(降雨イベント2)の2回の降雨を対象に降雨中の土壌中CO2濃度、土壌呼吸速度の連続観測を行った。その結果、両降雨で観測値の変化に違いが見られた。土壌中CO2濃度の変化は、特に深度15cmにおいて大きく異なっていた。降雨イベント1では、降雨開始から数時間後にCO2濃度が大きく低下し、その後降雨終了時までに回復した。一方、降雨イベント2では、降雨終了直前にCO2濃度が上昇を開始し、降雨終了後にピークを迎えた後も降雨前より高い濃度を保っていた。土壌呼吸速度に関しては、降雨前の値は両降雨で同程度であり、降雨開始後に大きく低下するという点でも共通していた。しかしながら、降雨イベント1では降雨終了後も土壌呼吸速度が回復しなかったのに対して、降雨イベント2後には、降雨前と同程度まで土壌呼吸速度が回復した。土壌各層のCO2湧き出し速度、CO2貯留量の推定結果から、降雨イベント1では、雨水が土壌表面を被覆することによるCO2拡散の停止に加えて、雨水に伴って侵入する低濃度CO2による土壌中高濃度CO2の押し出しという2つの現象が生じたと考えられた。一方、降雨イベント2では、CO2拡散の停止が卓越していたと考えられた。降雨中に生じる現象が2回の降雨イベントで異なった要因は、降雨前の土壌中CO2環境の違いにあることが示唆された。