著者
奥 愛
出版者
日本地方財政学会
雑誌
日本地方財政学会研究叢書 (ISSN:24367125)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.47-66, 2022 (Released:2023-03-26)
参考文献数
27

本稿では,日本の自治体がエネルギーの地産地消を目指し,再生可能エネルギー供給事業に関わる際に直面するリスクへの対応について,アメリカのカリフォルニア州のCCA(Community Choice Aggregation)を事例に取り上げ検討した.CCAは電気料金を低くしながらも再生可能エネルギーの比率を高め,住民の理解を推進するインセンティブが働く設計になっている.本稿で取り上げた事例では,積極的な情報開示や補助金に依存しない事業収益での活動,地域電力会社との役割分担がなされている.また,価格変動リスクに対しては,緊急時,長期,常時の3つの局面に応じた対応が行われている.さらにリスクを減らすための対応としては,規模の経済を目指すことが有効であり,オプト・アウト方式の導入により顧客が増加すれば,電力調達で価格交渉力を強め,安定した財政基盤を築くことができる.連携については,日本では自治体新電力に都道府県が関与しながら進めていく方法が考えられる.本稿は,日本の自治体新電力にとって参考となる再生可能エネルギーの導入に伴うリスク対応策について,CCAを事例に用いた分析を通じ,地域住民の合意に基づく意思決定が行われ,各地域が水平連携し,代表組織との垂直連携を進めながら,自律的な地方自治が形成されている動きも明らかにした.