著者
奥山 智緒
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2006年5月より2009年4月までに施行されたFDG-PET検査あるいはFDG-PET/CT検査5,027例中偶発的に甲状腺への集積を指摘された125症例の中で、組織学的検証がなされたものをretrospectiveに検討しそのFDG集積にと良悪性を検討したところ、FDG-PET検査にてincidentalに甲状腺にhot spotを認めた症例の中で、悪性病変は27例、生検にて良性と判断され経過観察となっている症例は18例あった。これらのFDG-PETの集積を半定量的にSUVにて比較検討したところSUVmax(mean±S.D)は、悪性で3.8±5.4、良性で2.3±3.7で良群間に有意差は認められず、FDG集積にて良悪性を鑑別することは容易ではないと考えられた。FDG-PET/CT症例より、甲状腺にFDG集積を有する症例から、MRSを施行し結節を摘出する症例を抽出。2010年4月~2011年3月に当院にてFDG-PET/CTを施行した1535例の中で、甲状腺に診断が未確定な結節を認めた症例は52例、うち、FDG集積を有する症例は18例で、その中で結節のサイズが1cm以上のものは6例であったが4例においては、原疾患の診療が優先され、甲状腺結節の精査は見合わされた。残る2例は、頸部超音波検査にて腺腫様甲状腺腫と診断され、摘出や生検は施行されなかった。当初、本研究においては、FDG陽性の甲状腺結節に対し、1H-MRSによる甲状腺結節のコリンピークの検出と、良悪性の評価を行う事を目的としていたが、対象症例の登録が困難な状態と判断し、次の検討に移った。甲状腺癌にて甲状腺全摘後の患者において、FDG-PETやI-131にて集積を確認された転移病巣に対して1H-MRS studyの有用性を検討した。甲状腺癌全摘出術後のFDG陽性の頸部病変、上縦隔病変は5mm以上の病変をMRI上確認できるが、MRSの基線の振れが大きく有意なスペクトルを取ることは困難であった。甲状腺術後にみられる頸部小結節について質的診断のために1H-MRSを使用するためには、現時点では課題が多いと考えられた。