著者
奥山 直樹
出版者
The Japanese Society of Pediatric Surgeons
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.781-786, 2015

【目的】出生体重(birth weight;以下BW)1,000 g 未満の超低出生体重児(extremely low birth weight infant;以下ELBWI)群の中で,ドレナージあるいは開腹手術を要した児達の救命の状況,中・長期に渡る治療経過中に現れた問題点を検討した.<br>【方法】1981 年以降2012 年までに開腹手術を受けたELBWI を15 例経験した.ELBWI 群を更にBW 500 g 以上1,000 g 未満例とBW 500 g 未満例に分け救命の状況を検討した.そしてELBWI の救命率をBW 1,000 g 以上1,500 g 未満の極低出生体重児(very low birth weight infant;以下VLBWI)群と比較・検討した.生存例は中・長期治療中に表れた問題について検討した.<br>【結果】ELBWI 群は15 例中7 例が生存しており,生存率は46.7%であった.BW 500 g 未満症例は3 例あり,2003 年以降に2 例を救命できた.BW 500 g 以上1,000 g 未満症例は12 例あり,救命できた5 例は1 例にダウン症を1 例に脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia;以下PVL)を認め精神発達遅延(mental retardation;以下MR)と成長障害を認めるが他の3 例は正常に成長・発達している.BW 500 g 未満症例の3 例は2001 年,2003 年,2010 年に1 例ずつ経験し,2 例が生存している.うち1 例はPVL をきたし,もう1 例は水頭症と慢性肺疾患を合併し,双方ともMR および成長障害を認める.<br>【結論】近年はELBWI 群であっても救命できる可能性が高くなった.しかし中枢神経障害などから成長発達障害やMR を高率に認め,今後の課題であると考えられる.
著者
小林 久美子 窪田 正幸 奥山 直樹 平山 裕 塚田 真実 佐藤 佳奈子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.825-829, 2009

【目的】小児外科疾患の中には長期入院や退院後の長期外来通院を必要とする疾患も多く,長期に診療を行う過程で離婚をされる家庭もあり,長期治療の影響が懸念される.そこで離婚した母親のアンケート調査から,長期加療を要する小児外科疾患が家庭環境に及ぼす影響を検討した.【対象および方法】当科において長期入院加療を受け現在も継続して加療中の患児の母親で,我々が離婚されたと知りうることができた母親6名に,事前に電話にてインタビューを行い,了解を得た5名にアンケート調査を施行した.アンケート項目は,1)離婚に関して,2)病院に関して,3)公開の是非で,患児の疾患はCIIPS,短腸症候群,cloaca,小腸閉鎖,鎖肛であった.【結果】1)離婚に関しては,子供の疾患が離婚の直接の原因であったとの返答はなく,思わないが2名,どちらともいえないが3名であった.長期入院で離婚の危機感をもったのは1名で,2例はそうではなく,2例はどちらともいえないという返事であった.しかし,長期入院が離婚に影響を与えたとの返事が3名からあった.2)病院に関して,完全看護を必要だと思う母親は2名で,思わないは3名であった.また,病院に対する要望として,長期入院時の大部屋での同室者がいる苦痛や,父親に対する介護指導や教育の必要性が寄せられた.【まとめ】小児外科疾患が離婚の直接の原因ではないとの返答であったが,長期入院生活が及ぼす影響は大きいものと考えられた.父親の教育や指導を希望する要望があったことは,今後の小児外科医療に対する課題が提示されたものと考えられた.
著者
奥山 直樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.879-883, 2014-08-20 (Released:2014-08-20)
参考文献数
8

【目的】慢性機能性便秘症は一般的に予後良好とされ,多くの患児が緩下剤投与や浣腸による排便調整にて改善する.しかし一部に長期に渡る保存的治療に抵抗性の症例がある.これらの症例のなかに高位での椎弓癒合不全を有する症例を多く認めた.排便困難が特に強い患児に対し,脊髄の異常など器質的病変を探す目的で腹部・骨盤CT を施行した.このCT から3D 画像を構築し椎弓の癒合不全を評価した.【方法】2003 年から2011 年にかけ,高度の排便困難にてHirschsprung 病が疑われ当科紹介となった157 例に注腸および直腸肛門内圧検査を施行した.Hirschsprung 病およびその類縁疾患6 例を除く151 例に対し排便調整を行った.浣腸以外に自然排便がなく,排便調整を1 年以上続けても症状が改善しない症例,および遺糞症にて鎮静下摘便を繰り返す20 例(13.2%)を,高度の慢性機能性便秘群とした.腹部・骨盤CT から3D-CT を構築し,椎弓癒合不全が始まる高さを評価した.比較対象は虫垂炎,神経芽腫や腸重積症などにて同時期に腹部CT を施行された非便秘症群29 例とした.【結果】非便秘群の3.4%はL5 以下で,34.5%はS1 以下で椎弓の癒合不全を認めた.これに対して高度慢性機能性便秘群の55.0%はL5 以下で,90.0%はS1 以下で椎弓の癒合不全を認め,有意に高値となった.【結論】高度の慢性機能性便秘群は,有意に高位で椎弓癒合不全が存在する結果となった.