著者
奥村 直毅
出版者
京都府立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究は、角膜移植後の患者に対してRhoキナーゼ阻害剤の点眼投与により角膜移植後の長期成績を改善させる新規薬物療法、またフックス角膜ジストロフィなど角膜内皮のアポトーシスを原因とする角膜内皮疾患に対して、アポトーシス、細胞死を制御することによる角膜移植によらない新規治療法の開発を目標として行った。角膜内皮のアポトーシス関連分子へのROCKシグナルの影響についてウエスタンブロッティング法などにより解析を行った。現在も検討を継続中であるが、従来十分明らかにされていない角膜内皮のアポトーシスシグナルの解明は新規治療法、予防法の開発につながると考える。さらにマウスを用いた角膜移植モデルにおいてRhoキナーゼ阻害剤点眼の影響を検討して、角膜移植後に特記するべき重篤な副作用を認めないことを確認した。また、共同研究を行ったシアトルアイバンクより研究用角膜の提供を受けて、1ヶ月間の器官培養を行いRhoキナーゼ阻害剤の影響を検討した。この検討により、ヒト角膜を用いた器官培養において、Rhoキナーゼ阻害剤がアポトーシス、細胞死を抑制することを、免疫組織学的染色および電子顕微鏡による解析により明らかにした。このことは、従来培養細胞において我々が確認したRhoキナーゼ阻害剤がアポトーシス、細胞死の抑制作用がヒト組織においても有用であることを初めて示したものであり臨床応用化の観点から重要な知見である。この結果を受けて現在、角膜移植後の患者へ角膜移植後の長期成績を改善させるためにRhoキナーゼ阻害剤の点眼の投与を行う、新規治療法の臨床研究の準備を進めている。
著者
坂本 雄二 奥村 直毅 小泉 範子 山崎 健太 北野 絢嗣 沼田 諒平 駒田 孝文 星 信彦
出版者
比較眼科学会
雑誌
比較眼科研究 (ISSN:02867486)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.3-11, 2012-12-27 (Released:2013-07-31)
参考文献数
22

角膜内皮は角膜の透明性を維持するために重要な役割を果たしている。我々は、角膜内皮研究のための新たな実験動物モデルを開発することを目的とし、フェレットの角膜内皮の形態学的特徴を調べ、実験動物として用いることができるか否かを評価した。さらに、フェレット角膜を組織学的に解析し、ウサギおよびカニクイザルの角膜と比較した。フェレット角膜組織のフラットマウント標本を用いた免疫組織学的検討の結果、フェレットの角膜内皮細胞は角膜内皮機能に関連するマーカーであるZO-1、N-カドヘリンおよびNa+/K+-ATPアーゼを発現していることが確認された。また、フェレット角膜において、臨床的に重要な角膜内皮細胞のパラメーターである角膜内皮密度、六角形細胞率および変動係数を、臨床診療で用いられている分析ソフトウェアを用いて解析することができた。フェレット角膜内皮細胞の初代培養も可能であり、初代培養された角膜内皮細胞は生体内の角膜内皮細胞にきわめて類似した六角形細胞からなる単層構造を示し、機能関連マーカーであるZO-1およびNa+/K+-ATPアーゼを発現していた。これらの結果より、フェレットは眼科領域、特に角膜内皮研究における有用な実験動物となる可能性が示唆された。