著者
奥泉 久人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.293-302, 1993-07-01
被引用文献数
2

九州地方のスギさし木在来品種は, 成立の古さ, 種苗の由来などによって7系統に分けられている。林木の遺伝育種の研究機関に育種母材料として集植されている7系統57品種計323個体の材料を用い, 各品種内の構成クローン数を調べた。アイソザイムは, ポリアクリルアミドゲル垂直平板電気泳動法で9酵素種, 12遺伝子座の分析を行った。3遺伝子座(Gdh, Got-2,Pgm-2)については変異がなく, 9遺伝子座(Shd-1,Shd-2,6Pg-1,6Pg-2,Dia-3,Mnr-1,Got-1,Lap, Aap-1)では, 複数の遺伝子型が検出された。これらのアイソザイムの遺伝子型の違いにより, クローンの識別を行った結果, メアサ系統の品種のうち, 2品種は複数クローン品種であった。また, ホンスギ系統, アヤスギ系統, ヤブクグリ系統, オビスギ系統, 在来実生由来系統, 吉野スギ由来系統に分類されているそれぞれ2,5,1,15,4,9の品種が, 少なくとも2〜8クローンから構成されている複数クローン品種であった。