著者
奥田 司
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.65-80, 2001-04-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
105

染色体転座切断点の分子クローニングによって多くの候補癌遺伝子が同定されてきた.ヒト白血病においてもっとも高頻度に変異の標的となるものの一つがAML1遺伝子 (RUNY1とも呼ばれる) であり, これは転写因子複合体CBF (あるいはPEBP2) のDNA結合サブユニットをコードしている.遺伝子ターゲティング実験によってこの転写因子複合体は成体型造血の初期発生にとって重要な役割を担っていることが明らかにされている.多くの染色体転座関連AMLI融合遺伝子産物が, 正常AMLl機能に対するドミナント・ネガティブ作用によって白血病発症に関わっていることが, in vitroやin vivoでの実験で示されてきた.また, 注意深い臨床研究によってAML1のゲノム突然変異が, ある種の白血病発症と深く関わっていることも明らかにされている.さらに, マウスモデルを用いた実験や大規模な臨床研究によってAML1/CBFB関連白血病の発症経路の多段階をすべて明らかにしていこうとするプロジェクトが動きはじめている.本総説では正常造血および白血病発症におけるAMLI作用の分子基盤の現時点での理解について解説する.