148 0 0 0 OA 急性GVHDとTMA

著者
松本 公一 加藤 剛二
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.90-95, 2005-04-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
18

血栓性微小血管障害 (thrombotic microangiopathy;TMA) は細小動脈を主体とする微小血管内皮障害に基づく虚血性, 出血性の臓器障害である.造血幹細胞移植の現場において, しばしば急性GVHDとTMAは混同され, 鑑別が困難な場合も少なくない.とくに近年, 消化管TMAという概念が導入されて以来, いっそう両者の境界は混沌としている.これは急性GVHDの診断基準が, TMAの存在を抜きにして設定されていることと, TMAの診断基準が明確でないことが影響しているものと考えられる. TMAの危険因子として, FK 506などの免疫抑制剤, 非血縁者間移植, HLA不適合血縁者間移植, ABO不適合移植, VODがあげられる.完成されたTMAの治療は困難であるので, 大腸生検などにより早期にTMAの存在を認識し, 過度の免疫抑制を控えることが移植成績の向上につながると考えられる.
著者
白幡 聡
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.95-103, 2008-04-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
22

かつて, 新生児期のビタミンK欠乏性出血症は, 新生児出血性疾患の花形的存在であった.一方, 1970年代後半に入ってその存在が広く知られるようになった幼若乳児のビタミンK欠乏性出血症は, 母乳栄養児に好発し, しかも大多数の患児が頭蓋内出血を起こして, 過半数が死亡するか後遺症を残すため, 母乳哺育のアキレス腱として社会的にも大きな関心を集めた.これらの疾患は, 出生時, 産科退院時, 1カ月健診時のビタミンK製剤予防投与によって激減したものの, 少なからぬ幼若乳児が現在でもなおビタミンK欠乏による出血に見舞われている.フランスや英国などEU諸国では, 週1回あるいは連日ビタミンK製剤を経口投与する方式が導入され, これらの方法でビタミンK製剤を投与された乳児の中から本症は起こっていない.そこでわが国でも新しいガイドライン (案) が提唱されている.
著者
犬飼 岳史 合井 久美子 根本 篤 高橋 和也 赤羽 弘資 廣瀬 衣子 杉田 完爾 中澤 眞平
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.548-553, 2004-10-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
16

帯状疱疹から無菌性髄膜炎に進展した同種骨髄移植後の骨髄異形成症候群児と, 帯状疱疹の発症から隔離までに3日間を要した化学療法中のWilms腫瘍児から, 既感染やワクチン接種例2名を含む免疫抑制状態にある4名に水痘の院内感染を経験した.院内感染予防として40mg/kg/dayのアシクロビル (ACV) 予防内服を, 免疫抑制状態にない未罹患の6名に接触7日目から7日間行ったが, 1名が水痘を発症した.一方, 免疫抑制状態にある21名 (うち未罹患7名) と免疫抑制状態にない未罹患9名ののべ30名に接触直後から21日間のACV予防内服を行ったところ, 水痘の発症は認められず, ACVによる副作用も認められなかったことから, ACV長期投与は安全で有効な院内感染予防法であることが示唆される.帯状疱疹に対する曝露では, 患者隔離のみならず, 免疫抑制状態にあるワクチン接種・既感染症例に対してもACV内服による積極的な予防対策を行う必要がある.
著者
加藤 充子 東 英一 井戸 正流 伊藤 正寛 二井 立恵 樋口 和郎 庵原 俊昭 神谷 斉 桜井 実
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-65, 1991-03-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
15

免疫化学療法および中枢神経系に対する再発予防治療 (4例を除き24Gy頭蓋照射を含む) を受け, 完全寛解が5年以上持続している小児急性リンパ性白血病 (ALL) 患児56例について, 発症後の知能指数 (IQ) の経時的変化を検討した.対象症例の経過観察期間は発症後5.1~15.5年, 平均10.1年で, この間に一人当り1~4回, 計121回の知能検査を実施した.42例については, 1.4~10.0年, 平均4.5年の間隔で2回以上の検査が行われた.この結果, 1) IQは発症後1~3年以降, 時間の経過とともに低下する.2) IQの低下は発症時年齢と関係があり, 5歳未満発症児で有意の低下が認められる.3) IQの低下は性別と関係し, 女児において有意の低下が認められることがわかった.また, 発症後10年以上経過してもなおIQは低下し続ける傾向にあり, 長期間にわたる経過観察が必要であると思われた.
著者
野村 みどり
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.137-141, 2003-06-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
5

1950年代以降, 西欧諸国では, 病院におけるこどものためのあそび支援プログラムの発展と, その担当専門家の活躍によって, 家族中心ケアやプリパレーション (あそび・まなびを導入した診療準備) 等の支援も推進されてきた.1988年「病院のこども憲章」EACH Charterが作成され, 2002年, その現代的注釈が刊行された.本憲章の履行は, 国連こどもの権利条約の履行である.すなわち, 病院において親は, いつでも (夜間, 治療・検査時, 局所麻酔・鎮静中, 麻酔導入時・覚醒時, 昏睡状態, 蘇生処置中) こどもに付き添う権利を有し, 親は全面的にサポートされねばならない.こどもと親が処置すべてを事前に知っていることが意思決定に積極的に関わるための前提条件である.こどもを医療者の対等のパートナーに据えるとともに, 家族中心ケアの実現がもとめられており, わが国におけるその効果的推進のためには, 家族が付き添える病院環境の整備とホスピタルプレイスペシャリストなど, 専門家の養成・導入は緊急課題といえる.
著者
脇口 宏
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.59-67, 1999-04-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
59

慢性活動性EBウイルス感染症CAEBVの臨床症状, 免疫異常, ウイルス感染細胞の特徴, 診断, 治療などについて概説した.症状の主体は発熱, 肝脾腫, リンパ節腫脹で, EBウイルス感染細胞の異常増幅/EBウイルス負荷量増加に細胞性免疫能低下, サイトカイン産生異常などが関与していると考えられる.CAEBVにおけるEBウイルス感染細胞の主体はT/NK細胞で, クローン性の増殖を示す例が多い.両親の免疫機能にも異常があり, とくに母親と患児のNK活性には有意の相関が観察される.自己免疫性リンパ増殖症候群のなかにCAEBVに相当する臨床症状と, 免疫異常を伴う例があり, 本症の発病機序を考えるうえで興味深い.予後はきわめて不良であるが, 診断基準と治療方法はまだ確立されていない.骨髄移植と細胞傷害性T細胞養子免疫療法は今後期待される治療方法である.
著者
久保田 優 濱畑 啓悟 渡邊 健一郎 林 英蔚 宇佐美 郁哉 中畑 龍俊
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.401-404, 2001-10-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
14

ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血に全身の色素沈着を伴った12歳男児例を経験した.患児はビタミンB12の皮下注を受け, 貧血は約8カ月で軽快した.皮膚の色素沈着も徐々に軽快傾向を示し, 3年の経過でほぼ完全に消失した.自己免疫疾患や内分泌疾患の合併はみられず, 色素沈着はビタミンB12の欠乏によると考えられた.色素沈着は成書にも記載のないビタミンB12欠乏巨赤芽球性貧血のきわめて稀な合併症である.患児のように易疲労感を訴え色素沈着を呈する患者では, ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血をも考慮に入れて, 早期に血液検査を実施する必要がある.
著者
東 英一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.566-577, 2005-12-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
72

造血細胞移植を行うと移植前処置の影響で長期間にわたる深い免疫不全状態となる.この期間と重症度に影響を及ぼすのは, T細胞除去などの造血細胞処理, 造血細胞移植の種類 (ドナーの種類とドナー源), 移植片対宿主病の出現, 年齢依存性の胸腺機能の回復などである.免疫不全状態は感染症や白血病再発による有病率と死亡率を上昇させる.自然免疫の早期回復は多くの病原体から防御するのに役立つが, メモリー機能をもつT細胞とB細胞の獲得免疫の低下が数カ月から1~2年続くので病原体への易感染性が持続する.本稿では免疫再構築の知見の現況について述べる.
著者
丸尾 良浩 太田 茂
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.601-608, 2004-12-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
41

Gilbert症候群は軽症の遺伝性非抱合型高ビリルビン血症で, ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子 (UGT1A1) の変異により生じる.まれな重症, 中等症のCrigler-Najjar症候群1型, II型と異なり, Gilbert症候群は人口の3~7%に存在するため, さまざまな血液疾患の3~7%にGilbert症候群の合併がみられる.日本人にはGilbert症候群を起こす2つのUGT1A1の遺伝子多型が存在する.エクソン1のG71Rとプロモーター領域にあるTATA boxのA (TA) 7TAAで, おのおのの遺伝子頻度は0.16と0.15である.そのため, Gilbert症候群であるG71RまたはA (TA) 7TAAのホモ接合体や複合ヘテロ接合体のみでなく, おのおのの変異のヘテロ接合体も血液疾患の病像への関与がみられている.近年, 遺伝性球状赤血球症にGilbert症候群が合併すると胆石の発症リスクが上昇したり, 白血病の化学療法時にUGT1A1の変異をもつ患者には間接型高ビリルビン血症が誘発されることが明らかにされてきている.本総説では, Gilbert症候群と血液疾患の関わりをビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素全般をふまえて概説する.
著者
松井 純一 澤 文博 土田 昌宏 月本 一郎 亀田 典章
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.105-108, 1990-03-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

小児白血病にみられる脊髄腫瘍はまれであるが, 重篤な合併症である.私たちは急性白血病に合併した3症例の臨床経過と病理所見を報告し, 20歳未満の12報告例と比較検討した.脊髄腫瘤はおもに硬膜外腫瘤による圧迫症状で見つけられ, 胸椎から発生するものが最も多かった.治療としては化学療法と放射線療法が有効であるが, 急速に神経症状が進展する場合にはラミネクトミーを行うべきである.
著者
太田 茂 岩見 美香 成田 努 東野 克巳 鈴木 淳史 多賀 崇 島田 司巳
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC HEMATOLOGY/ONCOLOGY
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.364-368, 1998

Hodgkin病 (以下HDと略) の治療後における心合併症の報告は欧米では多数報告されているが, 本邦ではきわめて少ない.われわれはHDの治療経過中に心タンポナーデを発症し, 治療終了後にtherapyrelated pancytopeniaをきたした症例を経験したので報告する.症例は14歳男児, 前上縦隔原発のHD (nodular sclerosis) でmodified MOPPおよびセミマントルと縦隔部に総計36.3Gyの照射を行った.化学療法6クール目の前半終了後から突然, 胸痛, 胸内苦悶感および呼吸困難が出現した.心嚢穿刺の結果, 心タンポナーデと診断され経皮的ドレナージにて軽快した.細胞診によりHDの浸潤は否定された.その後, 1クールの化学療法後に治療終了となったが, しだいに大球性貧血となり汎血球減少となった.骨髄は低形成であったが, 染色体検査は正常であった.オキシメトロン投与にて経過観察したところ, ほぼ4ヵ月で汎血球減少は改善し現在治療終了後5年を経過しているが無病生存中である.
著者
栗山 貴久子 内藤 岳史 橋田 哲夫 大塚 拓治 日比 成美 今宿 晋作 澤田 淳
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.359-363, 1998-10-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
21

12歳で悪性貧血 (PA) を発症した男児例を報告した.患児は全身倦怠, 顔色不良を主訴に入院した.入院時, RBC 1.21×106/μl, Hb 4.7 g/dl, MCV 113.9 fl, MCH 39.2 pgと大球性高色素性貧血と好中球減少がみられた.血清のvitamin B12は低下し (190 pg/ml), 抗内因子抗体, 抗胃壁細胞抗体が陽性であった.骨髄検査では, 赤芽球の異形性と巨赤芽球性変化, 巨大後骨髄球, 好中球過分葉を認めた.胃内視鏡検査にて萎縮性胃炎が確認された.Schilling試験は57Co標識内因子, 58Coとも血中濃度が1.43%, 0.41%と著しく低値で, McIntyre II型PAと診断した. Vitamin B12の補充療法を開始したところ速やかに全身症状, 血液所見は改善したが, 萎縮性胃炎には高率に胃癌を合併する可能性があり, 定期的な内視鏡的検索が必要と思われた.
著者
小澤 美和
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.10-16, 2004-02-29 (Released:2011-03-09)
参考文献数
40

1980年代に, 小児癌患児らの心理的問題がPTSD症状に酷似していると報告された.そして, 1994年のDSM-IVではPTSDとしてのトラウマの概念が拡大され, 生命を脅かしかねない疾患に罹患することもトラウマと解釈されるようになった.その後, 小児癌患児・家族の心の問題をPTSDの枠組みで考えることの有用性が検証され, さらに, 脆弱因子などの調査も進んできた.欧米での患児におけるPTSSの発症が2.6~47%に対して, 少ない報告ながらわが国の報告では80~83%と非常に高い頻度であった.PTSS発症における予防的介入は, 患児自身のみならず両親に対しても必要である.主観的治療強度, ソーシャルサポート授与感, 特性不安, 告知などを考えに入れて介入する.また, 日本での調査では, アレキシシミック (感情表現困難) な性格傾向とPTSS発症との関係が指摘され, これが, 日本人に特有な性格傾向であることは興味深く, 今後, 日本での調査を進め, われわれがもつ特性とPTSS発症の関係が明らかになることで, 小児癌患児にとってさらに有効な援助を行うことができるだろう.
著者
村木 可枝
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.346-352, 1999-10-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
24

ミトコンドリアDNA (mtDNA) の欠失を診断根拠とする4人のPearson症候群の患者を臨床的および分子遺伝学的に検討した.本症の主徴である鉄芽球性貧血や膵外分泌不全は必須ではなかった.しかし全例で, 新生児期に汎血球減少と骨髄前駆細胞の空胞化を認め, 貧血が血小板減少, 穎粒球減少に先行した.幼児期まで生存した2例では造血器障害は自然に改善し, それは末梢血および骨髄細胞での欠失mtDNAの比率の低下と関連があると考えられた.また1細胞内のmtDNAの絶対量の核DNA量に対する比率を計測したところ, 回復期の骨髄において, 欠失mtDNAは減少し, 正常mtDNAは増加していることを示した.その2例は, 後に筋力低下, 心伝導障害, 網膜色素変性を発症し, Kearns-Sayre症候群へ移行した.
著者
畑江 芳郎 中野 育子 飯塚 進 武田 武夫
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.429-433, 1998-12-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
17

全身性エリテマトーデス (SLE) の21歳の女性に併発した急性骨髄性白血病 (AML) の報告である.患者はSLEの治療としてコルチコステロイドおよびアザチオプリンなどの投与を受けていた.治療開始約11年してAMLを発症した.抗白血病剤による強力な寛解導入療法を行ったが, 完全寛解を得ることができなかった.剖検では骨髄はもとより肝, 脾, 腎, 大腸およびリンパ節などほとんどすべての臓器に白血病細胞の浸潤が著明であった.自己免疫性疾患にリンパ系増殖性疾患の合併はいわれているが, SLEの治療経過中にみられるAMLの併発は稀と思われる.本例においてはAML発症の原因はあるいは偶然の一致かもしれないし他の要因によるのかもしれないが, 免疫抑制剤であるアザチオプリンの投与による可能性も否定できない.SLEの治療にさいしてこのような薬剤選択に当たっては慎重であらねばならない.
著者
松林 正 市川 広美 稲垣 晴代 今枝 正行 水谷 文彦 安藤 光広 鈴木 賀巳 西村 豊
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.172-175, 1991

急性リンパ性白血病を合併した結節性硬化症の1例を報告した.症例は結節性硬化症の9歳の女児で, 発熱と全身倦怠のため近医受診, 血液検査・骨髄検査にて急性リンパ性白血病と診断され当科紹介入院となった.骨髄塗抹標本では芽球が96%を占めていた.芽球は細胞生化学的には, ペルオキシダーゼ染色陰性, PAS染色陽性で, 表面マーカー検索では, CD9, CD10, CDI9, CD20, HLA-DR陽性であった.化学療法を行い, 完全寛解を得た.神経線維腫症では白血病合併例は散見されているが, 同じ神経皮膚症候群である結節性硬化症での白血病合併は非常に稀である.
著者
黒岩 常祥
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.128-136, 2003-06-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
18

真正粘菌でミトコンドリア核を発見したことによって, ミトコンドリアの分裂は, ミトコンドリア核分裂とミトコンドリア基質の分裂 (ミトコンドリオキネシス) に分けて研究することが可能となった.ミトコンドリオキネシス, いわゆるミトコンドリアの分裂機構は, 主にミトコンドリアの分裂が同調化できる原始紅藻Cyanidioschyzon merolaeで解析された.その結果, ミトコンドリアは, 古代からのFtsZリング, 内外のMDリング, そしてダイナミンリングの四重のリングを順次に使って分裂していることが明らかとなった.驚くことに, ほとんど同じリングが, 植物の機能の現場である葉緑体 (色素体) の分裂にも使われていた.これは偶然であろうか.ミトコンドリアと色素体の起源が同じであるという視点からも真核細胞誕生の謎を考察する.
著者
藤枝 幹也 脇口 宏 川久保 敬一 渡辺 誠司 倉繁 隆信 弘井 誠 原 弘
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.499-503, 1992

症例は7歳女児.3歳7ヵ月頃から出血傾向, 血小板減少, 巨核球減少, 赤芽球形態異常とHbF高値などが持続し, 6歳2ヵ月に骨髄芽球の増加がみられ, 骨髄異形成症候群 (MDS, RAEB) と診断された.少量cytosine-arabinoside (Arac-C) 療法で, 貧血と出血傾向の改善, 芽球の減少がみられたが, 約1年後にovert leukemla (FAB分類M2) に急性転化した.多剤耐性で寛解がえられず, 入院9ヵ月目から咳嗽出現し, 胸部レ線像でび慢性の浸潤像と心陰影の拡大が認められた.抗生剤, 抗真菌剤, 強心剤に反応せず死亡した.剖検では, 左肺上葉に空洞形成がみられ, 組織学的にアスペルギローシスの像を呈していた.全肺胞はPAS染色で顆粒状に染まる物質でみたされ, 一部oil redに染まっていた.電顕像でmultilamellated structureが認められアスペルギルス感染に伴う肺胞蛋白症と診断された.
著者
周 燕文 駒田 美弘 張 小麗 花田 基 東 英一 桜井 實
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.383-389, 1991

患児由来白血病細胞のモノカイン産生能を検討するために, 溶連菌製剤OK432刺激によるTNF-αの産生を検索した.正常末稍血中のTNF-α産生細胞は, OK432およびTPA刺激では単球であり, PHA刺激ではリンパ球, 単球両者であった.本研究では, ALL患児 (43例), ANLL患児 (18例), CML患児 (2例) 由来白血病細胞のTNF-α産生能について検索した. ALL43例中7例に少量のTNF-α産生を認め, うち4例がcommon ALL, 2例がundifferentiated type ALL, 1例がBcell ALLであった.7例中2例は骨髄系抗原を発現しており, 2例は1歳未満の症例であった.18例のANLLにおいては, M1の3例中2例, M2の3例中1例にTNF-α産生がみられた. M4の6例とM5bの4例では, 全例に高い産生が認められた.M5aの2例は産生を認めず, CMLの2例は少量のTNF-αを産生した. TNF-α産生は, 単球特異的なCD14抗原の発現と相関していた.小児白血病細胞のTNF-α産生は, 単球系への分化傾向を示す細胞に特徴的と考えられた.