著者
岩田 一明 上田 完次 奥田 孝一
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.510-515, 1982-04-05
被引用文献数
8

本研究はバリ生成機構を解明することを目的としている.このために, 走査型電子顕微鏡内で微小切削試験装置を用いて, 二次元切削実験を行い, バリ生成過程における被削材の動的挙動を直接観察した.また, 三角形要素を用いたVisioplasticity法および有限要素法を適用することにより, 相当ひずみ増分および相当応力の分布を求めた.実験より, 3種類のバリの形態, すなわち塑性曲げ変形により切削方向に押し出される正のバリ, 破壊により被削材から引きちぎられてできる負のバリ, 被削材から切りくずが完全に分離されずに部残留するバリが観察され, また, 切削終了部で切れ刃近傍から被削材端面にかけて塑性変形域が形成されるのが観察された.この負のせん断角をもつ変形域を負の塑性域と呼ぶことにする.これらのことより, 負の塑性域の形成およびこの領域におけるき裂の成長挙動がバリ生成機構に重要な役割を果たすことがわかった.