著者
井上 雅彦 奥田 泰代
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.15-20, 2020-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
15

発達障害の親であり親のための相談者であるペアレント・メンターが、自らの体験の語りについて、聞き手である他者との関係の中でどのように捉え、価値づけしているのかを検討するため、ペアレント・メンター52名(51名が子どもに自閉スペクトラム症の診断あり)に対し、自分の体験を話した機会とその肯定的体験、否定的体験及びその理由について自由記述の質問紙で回答を求め、その内容をKJ 法に準拠した手続きにより整理・分析した。本研究の結果から、ペアレント・メンターがメンター活動の中で自己体験を語るさまざまな機会が示された。肯定的体験や否定的体験になりやすいカテゴリ項目が存在すること、また同じカテゴリの項目でも関与する要因によって、肯定的体験にも否定的体験にもなりうることも明らかとなった。またこれらの体験に関与する要因として、【聞き手からの共感】【聞き手との交流】【達成感】【語りへの抵抗】という4 つが得られた。これらの結果をもとに、ペアレント・メンターが自己体験を話すことの意味とメンターの語りという活動への支援のあり方について考察した。