著者
妹尾 克利
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.19-37, 2013 (Released:2016-07-02)
参考文献数
28

我が国でもパブリック・アクセスの活動が盛んになってきたが,全国各地の 市民メディア活動団体が抱える主な課題として,財政面のほかに人材育成が挙 げられる。今,学校現場においても,メディアを活用して地域でのコミュニケー ションをデザインできる人材の育成に力を注ぐことが求められている。メディ アを通して主体的に情報発信する能力を育むための教育方法として映像制作が 注目され,多くの実践が報告されている。しかし,地域情報活性化の視点で行 われている実践はまだ少ない。 学校放送部では,40年以上も前から部活動の一環として,地域をテーマとし た映像制作活動が行われている。そこで,本研究では,研究者が顧問を務める 高校放送部において映像制作活動の参与観察を行なった。次に,北海道全域の 高校放送部で映像作品を制作に関わったことのある放送部員にアンケート調査 を行った。その結果,制作に関わった高校生は,メディア・リテラシー能力の みならず,地域への関心が高まっていることがわかった。さらに,学校放送部 の活動が,地域の情報活性化に貢献することができないか,その可能性を探る べく,地域住民を対象とした作品の上映を行い,視聴者へのアンケート調査を 行なった。その結果,高校生の取材活動に対する「期待」や「話し合いの重要 性」などが読み取れた。