著者
姜 恩和
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.63-75, 2014-05-31 (Released:2018-07-20)

韓国では,2012年8月に全文改正された養子縁組特例法が施行され,養子縁組の成立を当事者による届出のみとするのではなく,家庭裁判所による許可制とするなど,子どもの権利保障という点で大きく前進した.しかし,施行後,養子縁組斡旋機関に預けられる子どもの人数が減り,乳児の遺棄事件が絶えないとして議論が続いている.この議論について,本稿では,出生届の捉え方に焦点を当て,子どもの出自を知る権利対未婚母のプライバシー保護の権利と,家庭で育つ権利という二つの論点に分けて分析した.その結果,養子縁組は,虚偽の出生届を媒介とし,望まぬ妊娠をした女性を対象とした社会福祉制度として機能してきたが,2012年特例法への改正に際して,この機能が看過されたことが,施行後すぐに再改正の議論が起きている最たる要因であることが明らかになった.韓国社会で未婚の状態での出生届がいかに負担感の大きいものかが改めて問われているのである.