著者
孟 盈
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.185-199, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
25

日中漢字類似性が中国語を母語とする日本語学習者(以下,CLJ)の単漢字和語動詞の習得に与える影響を明らかにするため,単漢字和語動詞を「同義同形類」,「同義異形類」に分類し,CLJとインドネシア語を母語とする日本語学習者(以下,ILJ)に対して,産出テストと理解テストを行った。その結果,「同義同形類」では,日中漢字類似性がCLJの産出と理解の双方に正の転移をもたらし,書字的類似性だけで習得が促進されることが明らかとなった。「同義異形類」の理解テストでは,書字的類似性による表記親近性効果が生じ,CLJはILJより理解度が高い傾向であった。一方,産出テストでは,同意味を表す日本語には中国語と書字的類似性がないため,CLJとILJに差はなかった。このことから,CLJは「同義異形類」について意識的な学習を行う必要があることが示唆された。