著者
孫 嘉寧
出版者
日本文化人類学会
巻号頁・発行日
pp.113, 2018 (Released:2018-05-22)

まず、鳴釜神事の由来が結末に語られる桃太郎昔話の一モデルという吉備津地域温羅伝説の文献記録及び現在の神事を紹介する。鬼・温羅は製鉄技術を持つ渡来統治者とされ、伝説の語りには渡来集団と在地集団と中央政権など重層な対立関係やねじれが見られ、ローカル歴史が不断に語り直されることを、構造主義、伝承と歴史、記憶理論、両義性の概念や理論で考察し、今日観光文脈との関連と、地域アイデンティティの再構築を指摘する。