著者
宅間 清
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.579-617, 1938

胃液分泌機轉ハ神經性・體液性・體液神經性ノ三機轉ニ依リテ行ハル.而シテ體液神經性機轉ニ於テハ體液ノ變化ニ依リテ分泌神經中樞ニ惹起セラレタル興奮ガ副交感神經ヲ經テ胃腺細胞ニ傳達サルヽモノトセバ大及ビ小内臟交感神經中ニ介在セル脊髓副交感神經纖維モ亦之ニ關與スルヤ否ヤ疑義アルモ之ニ就キテハ未ダ實驗ヲ見ズ.又大及ビ小内臟交感神經ノ胃液分泌ニ及ボス影響ニ關シテハ各研究者ニ依リソノ説ヲ異ニス.依ツテ余ハ雌犬ヲ用ヒ兩側大及ビ小内臟交感神經竝ビニ迷走神經ヲ横隔膜直下ニ於テ切斷シ, 之ニ自律神經毒・體液神經性刺戟若シクハ阻止劑竝ビニ體液性刺戟劑ト稱セラルヽ物質ヲ用ヒ, ソノ胃液分泌ガ胃ノ外來神經特ニ内臟交感神經ニヨリテ受クル影響ヲ知ラント欲シテ實驗ヲ行ヒ, 次ノ如キ成績ヲ得タリ.<BR>「アドレナリン」ハ正常犬ニテハ胃液分泌ヲ或ハ抑制シ或ハ亢進セシメ, 區々タルモ兩側大及ビ小内臟交感神經切斷犬胃ニ於テハ多クハ亢進セシメ, 迷走神經切斷犬胃竝ビニ兩神經切斷犬胃ニ於テハ抑制セリ.<BR>「ピロカルピン」ハ正常犬竝ビニ兩側大及ビ小内臟交感神經切斷犬胃ニ於テハ胃液分泌ヲ亢進セシム.迷走神經切斷犬胃竝ビニ兩神經切斷犬胃ニ於テモ輕度ナガラ胃液分泌ヲ亢進セシメ, 後者ニ於テハ前者ニ於ケルヨリモ強盛ナリ.<BR>「アトロピン」ノ胃液分泌ニ及ボス作用ハ「ピロカルピン」ト全ク反對ナリ.<BR>體液神經性胃液分泌機轉ニ於テ體液ノ變化ニ依リ分泌神經中樞ニ惹起セラレタル興奮ハ大及ビ小内臟交感神經ニハ全ク關係ナク專ラ迷走神經ヲ經テ傳達サルヽモノナリ.<BR>「ヒスタミン」・「スピナチン」竝ビニ「モクソール」ノ胃液分泌機轉ハ體液性ニシテ「ヴィタミン」Cハ胃液分泌ニ對シ何等ノ影響ナシ.<BR>余ノ行ヒシ實驗範圍内ニ於テハ兩側大及ビ小内臟交感神經切斷ハ胃液分泌ニ對シ何等ノ特記スベキ影響ヲ及ボサズ.
著者
宅間 清
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.703-706, 1936-07-10 (Released:2011-06-17)

一般に自殺の目的を以て内服さるゝ劇毒藥は多種多様であつて, 之等の報告例も枚擧に遑がない.就中生體に對し黄燐は催眠剤等に比し猛毒で.最近吾ガ教室齋藤博士の報告に依ると, 其の死亡率は種々なる條件で差異はあるが53.5%である. 余は最近自殺の目的で「猫イラズ」約6gを服用し, 服用後11時間で初めて正規の治療をなし, 治療後13日目に全治せる1例を經驗したこから之れを茲に報告する.