- 著者
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岡田 甚七
- 出版者
- 財団法人 日本消化器病学会
- 雑誌
- 消化器病学 (ISSN:21851158)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.1, pp.11-149_11, 1941-01-10 (Released:2011-06-17)
中國人ノ常食ハ其ノ地理・文化・産業ニヨツテ著シク差異ガアル, 殊ニ支那中原ノ古都タル河南省開封ハ地理ニ惠マレ文化ノ香リ高ク, 中國有数ノ肥沃地チ擁シ, 今次事變マデ比較的諸外國ノ影響チ受ケルコト尠ク種々ノ點カラ市民ノ河南人ハ中國人常食調査ノ對象トシテ好適ト考へ, 凡ユル角度カラ之チ観察スルコトトシ, 食事様式・獸立表・食事囘數・食事時刻・勞働状態・勤務朕態ハ勿論宗教ノ及ボス影響・経濟ノ影響ニ就イテモ考察シ, 我ガ日本ト著シク異ナル點チ究メ, 榮養素的考察ニ當ツテハ攝取食品ノ種類ト其ノ攝取量テ明ラカニシ, 各榮養素ノ量ト配合割合, 竝ビニ熱量ニ就キ調査批判シタ.對象トシテハ集團生活者トシテ河南省立開封師範學校・同農林學校・公立新華女子中學・新民會開封青年訓練所・河南省甲種警察教練所・河南鹽務管理局第一大隊・同第三大隊チ選ビ, 屋外筋肉勞働者トシテ大工・洋車夫・配水夫チ選ビ, 室内勤務者トシテ當市一流商店店員・病院事務員・看護婦・開封地區視務職員・河南鹽務管理局職員・開封建設縄署員・開封新民婦女會員チ選ビ, 夏期ノー部及ビ秋・冬期ノ常食調査ト榮養學的考察チ試ミタ.元來中闘人常食ノ如ク, 日本人トシテ理解ト把握二因難ナモノハ爲眞ト表示ニヨル方法ガ便宜ナルタメ, 茲ニハ此ノ方法チモ併用シタ.尚Vitaminノ問題ニツイテハ特ニVitamin B1ノ缺乏症ガ殆ド無イコトチ診療ノ實際ニ照合シテ論ジタ.本第1囘報告ニ於テハ, 宗教就中囘教ノ常食ニ對スル影響チ記載シ, 次イデ集團生活者ノ秋季ニ於ケル常食ニ就イテノ調査結果テ報告スルコトトシタ.特ニ同教チ擧ゲタ所以ノモノハ開封ニ於テ食品取扱業者ノ中ニ著シク回教徒ノ多イガ故デアル. 囘教徒食品ガ特殊ノ招牌チ掲ゲテ販賣セラレテヰル状況チ説明シ, 其ノ特徴トシテ一定ノ方式ニ從ツテ, 祈緯セズシテ屠シタル獸肉チ取扱ハズ, 又獸肉中ニテモ猪肉 (豚肉) 其ノ他アル種ノモノチ用ヒザルコトハ囘敢教典中ニ示サレタ要綱チ遵守シツ, アルモノデ又囘教徒ガ囘教食ニ非ザレバ食セザルコトハ周知ノ處デアノレガ所謂清眞食品チ教徒以外ノモノガ利用スルコトハ全ク自由デアル.囘教徒ノ食餌ハ斯クノ如ク教義上・慣例上特色アルモノデアルガ, 之チ榮養學的ニ観ルトキハ爾他ノ食餌ト格別ノ相違ハ認メラレナイ.集團生活者秋期常食調査ニ於テハ, 食卓ノ形ト副食物ノ皿数トノ間ニ一定ノ關係チ認メ食事同数ハ3囘ノモノ, 2囘ノモノヨリ多ク, 食事時刻ニモ特殊ノモノアルコトテ指摘シ, 朝・書・晩各食餌ノ特徴チアゲ, 對象タル8集團中著シキ差異アルコトニ注目ス・穀類ハ小麥及ビ小米 (粟) ノ2種ニシテ1日平均710g, 豆類平均99g, 蔬菜類209gデアリ, 動物性食品ハ差別ガ著シイガー般ニ少量デアリ, 皆無ノモノモアツテ1日平均28.3g.尚調味料44g, 調理用油脂13.0gノ平均値チ得, カクシテ総攝取量ハ905.2-13449, 平均1090.2g.更ニ之チ榮養學的ニ観察シテ蛋白質・脂肪・炭水化物・無機物ノ量的關係チ尋ネタガ, 動物性蛋白質攝取ノ著シク少量ナルコトハ頗ル注目スベキ處デ, 蛋白ノ供給ハ主トシテ植物性ノモノチ主食物ヨリ仰イデ居ルノハ興味深イ點デアル・脂肪ノ攝取量ハ邦人ニ比シテ多量デアリ, 炭水化物ノ攝取モ亦各國ニ比シ多量デ主トシテ圭食品ヨリ得テヰル・無機物ニ就イテハ邦人ト著シキ逕庭ハナイ・蛋白質攝取量ハ86.8-108.3g平均96.4g, 脂肪ハ9.8-96.5g平均33.0g, 炭水化物ハ489.3-607.8g平均531.89デ, 無機物ハ16, 2-34.59平均24.9gデアル.縄熱量ハ2544.5-3356.7Cal, 平均2881.9Cal其ノ他注目スベキハ砂糖類チ攝取セヌコト及ビー般二邦人二比シテ水 (湯又ハ茶水トシテ) ノ飲用料著シク多量ニシテ, 平均1日量1100-1600ccノ撮取チ見ル.之等集團生活者ノ常食ハ軍調ニシテー見極メテ粗食ノ感チ抱カシメルガ, 之チ榮養學的ニ究明シテ見ルト邦人及ビ其ノ他各國人ニ比シテ椙當ノ差異アルコト及ビ榮養素的分析ノ結果ハ外見上程決シテ粗食デナイコトチ示スノハ興味深イ處デアル.