著者
岡田 甚七
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.11-149_11, 1941-01-10 (Released:2011-06-17)

中國人ノ常食ハ其ノ地理・文化・産業ニヨツテ著シク差異ガアル, 殊ニ支那中原ノ古都タル河南省開封ハ地理ニ惠マレ文化ノ香リ高ク, 中國有数ノ肥沃地チ擁シ, 今次事變マデ比較的諸外國ノ影響チ受ケルコト尠ク種々ノ點カラ市民ノ河南人ハ中國人常食調査ノ對象トシテ好適ト考へ, 凡ユル角度カラ之チ観察スルコトトシ, 食事様式・獸立表・食事囘數・食事時刻・勞働状態・勤務朕態ハ勿論宗教ノ及ボス影響・経濟ノ影響ニ就イテモ考察シ, 我ガ日本ト著シク異ナル點チ究メ, 榮養素的考察ニ當ツテハ攝取食品ノ種類ト其ノ攝取量テ明ラカニシ, 各榮養素ノ量ト配合割合, 竝ビニ熱量ニ就キ調査批判シタ.對象トシテハ集團生活者トシテ河南省立開封師範學校・同農林學校・公立新華女子中學・新民會開封青年訓練所・河南省甲種警察教練所・河南鹽務管理局第一大隊・同第三大隊チ選ビ, 屋外筋肉勞働者トシテ大工・洋車夫・配水夫チ選ビ, 室内勤務者トシテ當市一流商店店員・病院事務員・看護婦・開封地區視務職員・河南鹽務管理局職員・開封建設縄署員・開封新民婦女會員チ選ビ, 夏期ノー部及ビ秋・冬期ノ常食調査ト榮養學的考察チ試ミタ.元來中闘人常食ノ如ク, 日本人トシテ理解ト把握二因難ナモノハ爲眞ト表示ニヨル方法ガ便宜ナルタメ, 茲ニハ此ノ方法チモ併用シタ.尚Vitaminノ問題ニツイテハ特ニVitamin B1ノ缺乏症ガ殆ド無イコトチ診療ノ實際ニ照合シテ論ジタ.本第1囘報告ニ於テハ, 宗教就中囘教ノ常食ニ對スル影響チ記載シ, 次イデ集團生活者ノ秋季ニ於ケル常食ニ就イテノ調査結果テ報告スルコトトシタ.特ニ同教チ擧ゲタ所以ノモノハ開封ニ於テ食品取扱業者ノ中ニ著シク回教徒ノ多イガ故デアル. 囘教徒食品ガ特殊ノ招牌チ掲ゲテ販賣セラレテヰル状況チ説明シ, 其ノ特徴トシテ一定ノ方式ニ從ツテ, 祈緯セズシテ屠シタル獸肉チ取扱ハズ, 又獸肉中ニテモ猪肉 (豚肉) 其ノ他アル種ノモノチ用ヒザルコトハ囘敢教典中ニ示サレタ要綱チ遵守シツ, アルモノデ又囘教徒ガ囘教食ニ非ザレバ食セザルコトハ周知ノ處デアノレガ所謂清眞食品チ教徒以外ノモノガ利用スルコトハ全ク自由デアル.囘教徒ノ食餌ハ斯クノ如ク教義上・慣例上特色アルモノデアルガ, 之チ榮養學的ニ観ルトキハ爾他ノ食餌ト格別ノ相違ハ認メラレナイ.集團生活者秋期常食調査ニ於テハ, 食卓ノ形ト副食物ノ皿数トノ間ニ一定ノ關係チ認メ食事同数ハ3囘ノモノ, 2囘ノモノヨリ多ク, 食事時刻ニモ特殊ノモノアルコトテ指摘シ, 朝・書・晩各食餌ノ特徴チアゲ, 對象タル8集團中著シキ差異アルコトニ注目ス・穀類ハ小麥及ビ小米 (粟) ノ2種ニシテ1日平均710g, 豆類平均99g, 蔬菜類209gデアリ, 動物性食品ハ差別ガ著シイガー般ニ少量デアリ, 皆無ノモノモアツテ1日平均28.3g.尚調味料44g, 調理用油脂13.0gノ平均値チ得, カクシテ総攝取量ハ905.2-13449, 平均1090.2g.更ニ之チ榮養學的ニ観察シテ蛋白質・脂肪・炭水化物・無機物ノ量的關係チ尋ネタガ, 動物性蛋白質攝取ノ著シク少量ナルコトハ頗ル注目スベキ處デ, 蛋白ノ供給ハ主トシテ植物性ノモノチ主食物ヨリ仰イデ居ルノハ興味深イ點デアル・脂肪ノ攝取量ハ邦人ニ比シテ多量デアリ, 炭水化物ノ攝取モ亦各國ニ比シ多量デ主トシテ圭食品ヨリ得テヰル・無機物ニ就イテハ邦人ト著シキ逕庭ハナイ・蛋白質攝取量ハ86.8-108.3g平均96.4g, 脂肪ハ9.8-96.5g平均33.0g, 炭水化物ハ489.3-607.8g平均531.89デ, 無機物ハ16, 2-34.59平均24.9gデアル.縄熱量ハ2544.5-3356.7Cal, 平均2881.9Cal其ノ他注目スベキハ砂糖類チ攝取セヌコト及ビー般二邦人二比シテ水 (湯又ハ茶水トシテ) ノ飲用料著シク多量ニシテ, 平均1日量1100-1600ccノ撮取チ見ル.之等集團生活者ノ常食ハ軍調ニシテー見極メテ粗食ノ感チ抱カシメルガ, 之チ榮養學的ニ究明シテ見ルト邦人及ビ其ノ他各國人ニ比シテ椙當ノ差異アルコト及ビ榮養素的分析ノ結果ハ外見上程決シテ粗食デナイコトチ示スノハ興味深イ處デアル.
著者
村瀬 武吉
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.455-465, 1937-05-10 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9

自殺ヲ目的トセル急性中毒患者ニ就イテ, 其ノ使用セシ藥剤ノ種類・症状・服用量・收容迄ノ經過時間.轉歸・性・年齢等ヲ昭和10年及ビ11年ノ2箇年ニ當内科ニ於テ收容加療セシ35例ニ就イテ探究シ, 併セテ同ジク前記2箇年間ニ愛知縣下ニ發生セル該中毒患者822例ニ就キ, 統計的觀察ヲ行ヒ, 次ノ結果ヲ得タリ.尚本文中1種類ノ藥劑使用者ヲ單獨型中毒者トシ, 2種以上ノ藥剤使用者ヲ混合型中毒者トシテ區別シタリ.當教室ニテハ單獨型ハ29例, 混合型ハ6例ヲ數へ, 愛知縣下ニ於テハ單獨型ハ全中毒患者822例中734例, 混合型ハ85例ヲ數へ, 何レナリヤ不明ノモノ3例ヲ數フ.1. 單獨型中最モ多數ヲ占ムルハ催眠剤中毒ニシテ, 當教室ノモノハ其ノ單獨型ノ55.2%チ占メ, 本縣下ノモノハ, 其ノ單獨型ノ42.4%ノ多數ヲ占ム.死亡率ハ當教室18.8%本縣下18.4%ナリ.猫「イラズ」中毒ハ催眠劑ニ次ギ當教室ニテハ其ノ單獨型全體ノ20.7%ヲ占メ, 本縣下ニテハ其ノ單獨型全體ノ29.3%ヲ占メ, 死亡率ハ當教室66.7%, 本縣下60.5%ノ如キ高率ヲ示ス.猫「イラズ」ニ次ギ白髪染中毒ハ本縣下ニ於テハ, 其ノ單獨型全體ノ6.0%チ占メ, 死亡率ハ25.0%ナリ.之ニ次ギ昇汞中毒ハ其ノ單獨型全體ノ4.24%ヲ占メ, 死亡率75.0%ヲ占ム.青酸加里之ニ次ギ, 其ノ單獨型全體ノ4.2%ヲ占メ, 死亡率80.6%ヲ示ス.重「クローム」酸加里ハ其ノ單獨型ノ1.6%ヲ占メ, 死亡率ハ41.7%ヲ示ス.監酸ハ其ノ單獨型全體ノ1.4%ヲ占メ, 死亡率ハ40%ヲ示ス.其ノ他ノ藥剤中毒數十種アルモ表ノミニテ示セリ.2. 混合型中催眠劑ノミノモノ多數ニテ本縣下ニ於ケルモノハ混合型総數ノ約半數チ占メ, 死亡率ハ4.8%ヲ示ス.此ノ中「カルモチン」・「アダリン」混合服用者多數ヲ占ム.次ニ猫「イラズ」ヲ共ニスルモノ混合型全體ノ31.8%テ占メ, 死亡率ハ48.1%ナリ.此ノ中猫「イラズ」・「カルモチン」混合服用者多數ヲ占ム.3. 男女性別ニ於テハ本縣下ニ於ケル822例中男子56.3%, 女子43.7%ナリ.4. 本縣下ニ於テハ全中毒患者中30歳以下ノモノ75.8%ヲ占ム.5. 本縣下ノ中毒患者ヲ季節的ニ觀察スルニ3, 4, 5月最モ多ク, 6, 7, 8月之ニ次ギ, 9, 10, 11月及ビ12, 1, 2月ハ共ニ稍ゝ少シ.6. 地域的ニ觀察スルニ名古屋市ノ全中毒患者ハ愛知縣下全體ノ57.7%ヲ占ム.7. 本縣下ニ於ケル統計中全單獨型中毒者ノ死亡率ハ34.7%ニシテ, 全混合型中毒者ノ死亡率ハ22.4%, 而シテ單獨型・混合型テ合シタル中毒例ノ死亡率ハ33.7%ナリ.
著者
恒川 眞清
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.685-701, 1942

古來中國ハ寄生蟲ノ樂園ナリト稱セラレ, 各地ニ於ケル調査アレドモ, 未ダ開封地方ニ於ケル報告ヲ見ズ.余ハ開封地方ニ於ケル寄生蟲ノ分怖ヲ調査セント企圖シ, 先ヅ華人學童ノ糞便檢査ヲ施行セリ.期間ハ昭和16年3月初旬ヨリ6月下旬ニ互ル約4箇月間, 被檢者ハ開封市立第1並ビニ第5小學校兒童957名 (男675名, 女282名) 及ビ扶輪學校兒童130名ナリ.檢査方法ハ糞便ノ少量ニ生理食鹽水ヲ注加, 割箸ヲ以テ攪拌ノ後濾過遠心沈澱ヲトリ, 生鮮標本及ビドナルドソン氏沃度「エナジン」標本2枚, 更ニハイデンハイン氏「ヘマトキシリン」染色標本2枚ヲ製作シ精密ナル檢鏡ヲ行ヘリ.<BR>檢査成績ハ市立小學校兒童ニテハ蠕蟲卵保有者ハ918名 (95.9%) ニシテ, 之ヲ檢出率高キモノヨリ列擧セバ, 蛔蟲867名 (90.6%), 鞭蟲353名 (36.8%), 十二指腸蟲97名 (10.1%), 東洋毛樣線蟲77名 (8.0%), 無鈎絛蟲67名 (7.0%), 蟯蟲52名 (5.4%), 有鈎絛蟲47名 (4.9%) ノ順ナリ.原蟲嚢子保有者ハ617名 (64.4%) ニシテ之ヲ檢出率高キモノヨリ列舉セバ, 大腸「アメーバ」348名 (36.4%), 「エンドリマックス・ナナ」304名 (31.7%), 赤痢「アメーバ」217名 (22.6%), 沃度「アメーバ」153名 (15.9%), 「ヂアルヂア・インテスチナーリス」10名 (1.0%) ナリ.<BR>開封扶輪學校兒童ニ就イテモ略々同樣ノ結果ヲ得タリ.但シ絛蟲ハ稍々少キガ如ク思惟サル.是ハ主トシテ階級ノ相違ニヨル食餌並ビニ生活樣式ノ差異ニ依ルモノナラン.<BR>次ニ混合感染状態ニ就イテ觀察セルニ, 蠕蟲類ニ於テハ, 蛔蟲ト鞭蟲ノ二重感染最モ多ク, 原蟲類ニ於テハ大腸「アメーバ」ト「エンドリマックス・ナナ」ノ二重感染多シ.<BR>寄生蠕蟲ト原蟲ニ於テハ, 蛔蟲ト「エンドリヤックス・ナナ」ノ二重感染最モ高率ナリ.<BR>年齢的差異ハ殆ド認メラレズ.既二幼年者ヨリ高率ニ檢出サル.<BR>性別ニヨル差異ハ男稍々高率ナルガ如キモ, 有意義ナル差ヲ認メズ.<BR>階級的差異ニ就イテ觀察セバ, 蛔蟲並ビニ病原性「アメーバ」嚢子ハ下層階級ニ多ク, 絛蟲及ビ非病原性「アメーバ」嚢子ハ上層階級ニ高率ナルガ如ク思惟サル.<BR>以上ノ調査所見ヨリ考察ヲメグラスニ, 開封地方ハ相當高度ノ寄生蟲淫浸地ナリト稱スルコトチ得.
著者
早川 善平
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.652-657, 1937

慢性潰瘍性大腸炎は, 歐米には其の報告例かなり多く存在すれども, 本邦に於ては全く稀有である. Colitis gravisなる名稱はRosenheimの提唱したたものである. 併し多くの場合, 潰瘍を伴なふ關係上BoasはColitis ulcerosaと言つて居る. 尚更に急性なるものとの區別から, StmauβはColitis ulcerosa chronicaと言つて居る. 稻田氏も矢張り之に賛成の様である. 最近當教室に於て, 其の2例を經驗したから其の臨牀症状及び經過竝びに療法に就いて報告しやうと思ふ.
著者
渡邊 正一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.373-436,en11, 1940

正常血漿及ビ1%葡萄糖加血漿ト鶏胎兒壓搾液トヨリ成レル培地内ニ種々ナル濃度ノ「カンタン」・「エビナス」・「トリプトファン」・「グリココル」及ゼ「ヤノール」ヲ添加シDeckglass法ニ依リテ鶏胎兒小腸組織ノ培養ヲ行ヒ, 其ノ發育・培地ノ變化・新生組織細胞及ビ母組織内ニ於ケル糖原出現等ニ及ボス之等藥剤ノ影響ヲ検索セリ.<BR>培養小腸上皮細胞ノ發育ハ高濃度ニ於テハ何レモ阻止セラノレ、モ, 一定濃度ニ於テハ各藥剤共ニ發育促進作用アルヲ認メ, 「フィプロプラステン」ノ發育モー定濃度ニ於テ促進サル、ヲ認ム.<BR>遊走細胞ノ出現度竝ビニ培地ノ液化ニ對シテハ諸種藥物ノ影響認メ難シ.<BR>又培養組織粘膜上皮細胞及ビ新生粘膜上皮細胞内糖原出現ニ對シ「カンタン」及ビ「エビナス」ハ各濃度共ニ促進シラ高濃度ノ「トリブトファン」・「グリココル」及ビ「ヤノール」添加ニヨリ糖加培地ニ於テ抑劇的ニ作用シ, 低濃度ニ於テハ影響ヲ認メズ.<BR>億組織筋層内出現ノ糖原量ハ「カンタン」及ビ高濃度「エビナス」添加ニヨリ輕度ノ増量ヲ見ル.環輪状竝ビニ膜様増殖ヲ示セル部分ニ於ケル糖原出現ニ對シテハ餐種藥醐添加ニヨル影響テ認メズ.
著者
澤井 英夫
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.179-210, 1944-03-10 (Released:2011-06-17)
参考文献数
134

癌患者ニ於ケル血液酸鹽基平衡ト癌腫ノ發生並ビニ發育トノ關係ハ近時著シク興味ヲ喚起シ, 之ニ關スル研究ハ多數發表サレタリ. サレド其ノ意見區々ニシテ未ダ確タル定説ハ無キモ, Moore. R. Balint, R. Reding等多數ノ學者ハ癌患者血液ニ「アルカリ」度増加ヲ認メ, de Raadt, Goldfeder等ハ動物實驗ニ於テ「アルカリ」性環境ノ癌腫ノ發育ヲ促進スルテ報告シ, 略ゝ此ノ方面ニ於ケル主流ヲナシ, 血液中豫備「アルカリ」量ニ關シテハ蜜ロ正常若シクハ輕度ニ減少ストノ説比較的多シ.茲ニ於イテ余ハ癌患者 (特ニ消化器) ノ血液ニ就キ, 水素瓦期電極法ニテ血漿pHヲ測定シ, Van Slykeノ檢壓法ニヨリテ血漿炭酸瓦斯抱容量ヲ求メ, 以テ其ノ血液酸盤基平衡ノ状態及ビ岡田教授ノ創製サレタル癌「エキス」注射ノ之ニ及ボス影響ヲ觀察シ, 次ノ成績ヲ得タリ.先ヅ34名ノ癌患者ニ就キ其ノ血液酸鹽基平衡状態ヲ檢索セルニ血漿pH最高7.74, 最低7.565, 平均7.665ニシテ健常値 (7.637) ニ比シ箸明ニ「アルカリ」側ニアリ.血漿炭酸瓦斯抱容量ハ最高69.218 Vol%, 最低46.347 Vol%, 平均59.072 Vol%ニシテ健常値 (60.415 Vol%) ニ比シ僅カ乍ラ低ク, 即チー般ニ「アルカロージス」ヲ呈シ特ニ瓦斯性ノモノ多キテ認メタリ.癌「エキス」注射ノ癌患者血液酸塩基季衡ニ及ボス影響ニ關シテハ22例ニ就キ癌「エキス」注射約10囘毎ニ観察セル結果17例 (77.3%) ニ於テ「アチドージス」ニ傾クヲ見, 内9例ハ瓦斯性ニシテ臨牀経過比較的良好, 内8例ハ非瓦斯性ニシテ経過概シテ不良ナリ. 爾餘ノ5例ハ (22.7%)「アルカロージス」ニ傾キ内3例ハ非瓦斯性ニシテ経過比較的遷延セリ.次ニ11例ニ就キ癌「エキス」注射ノ及ボス影響ヲ注射前・注射後1, 2, 4, 8時間ト時間的ニ觀察セル結果8例 (72.7%) ニ於テ「アルカロージス」性變化ヲ生ジ, 内6例 (54.5%) ハ瓦斯性ニシテ最モ多ク且其ノ變化ハ敦レモ注射後約2時間ニシテ最高潮ニ達シ8時間ニシテ略ゝ元ニ復セリ.而シテ其ノ變化ノ度ハ注射囘數ノ増加ト共ニ縮小スルヲ認メタリ. 即チ癌「エキス」反復注射ニヨリ患者體内ニハ癌「エキス」ニ對スル或種ノ抵抗力漸次増大スルモノノ如シ.
著者
服部 敏良
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.611-648, 1936-07-10 (Released:2011-06-17)
参考文献数
49

「アドレナリン」ト「ヒスタミン」ノ兩者ガ心臓・血管系其ノ他諸種機能ニ封シ拮抗的ニ作用スルモノナルコトハ多數諸家ノ研究ニ濁リ明カナルトコロナレドモ, 胃液分泌作用ニ及ボス兩者ノ關係ニ就イテハ諸説アリテ未ダー致セザルノ憾アリ。依ツテ余ハ臨牀的竝ビニ實験的ニ兩者ノ胃液分泌作用ニ及ボス影響チ檢シ, 併セテ「アドレナリン」ノ作用機繭テ追求セルニ, 「アドレナリン」ハ人體竝ビニ正常犬胃ニ於イテハ或ハ抑制的ニ或ハ亢進的ニ作用スルモ迷走神経切斷犬胃ニ於イテハ抑制的ニ作用シ, 大及ビ小内臓神経切蜥犬胃ニ封シテハ時ニ抑制的ニ, 時ニ亢進的ニ作用スルテ認メ, 更ニ迷走紳経竝ビニ大及ビ小内臓神経切断犬胃ニ於イテハ殆ド影響チ及ボサ弱レテ認メ, 「アドレナリン」ハ大及ビ小内臓神経ニ作用シ胃液分泌テ抑制スル作用アルト共ニ又迷走神経ニモ作用シ, 時ニ分泌亢進チ來タスモノニ非ズヤトノ知見チ得タリ.而シテ「アドレナリン」ト「ヒスタミン」チ同時ニ注射スルトキ胃液分泌ニ及ボス影響チ見ルニ, 其ノ胃液分泌量・酸度トモ兩者ノ和ニ非ズシテ「ヒスタミン」單猫注射ノ場合ニ比シ減少セノレチ認メ, 又兩者チ交互ニ種々ノ時間的關係ニ於イテ使用スルニ「アドレナリン」ハ「ヒスタミン」ノ作用チ助長セズシテ寧ロ之レチ抑制シ, 「ヒスタミン」モ亦「アドレナリン」ニョル分泌量テ抑制スノレモノナルコトテ認メ, 「ヒスタミン」ト「アドレナリン」ハ胃液分泌機能ニ封シテモ亦他ノ機能ニ封スルト等シク拮抗作用チ呈スルモノナルコトチ認メタリ. 而シテ此ノ兩者間ノ拮抗作用ハ略々2時間ニシテ消失スルモノナルコトヲ知レリ.
著者
村瀬 武吉
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.13-38, 1937

成熟健康ナル雌犬ニチリー・ヴエラ氏腸瘻管ヲ設置シ, 實験當目ハ室腹トナシ早朝ヨリ腸液ヲ分劃的ニ採取シ, 腸液量及ビ腸液中ニ含有サル・「アミラーゼ」・「リパーゼ」・「エレプシン」ノ3酵素ノ諸種藥剤ニヨル影響ヲ實験セリ.<BR>先ヅ自律神経毒ニヨル影響ヲ實験シタルニ, 「ビロカルビン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量ハ増加シ, 「アトロビン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量減少シ, 「エルゴタミン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量減少シ, 「ヒョリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素總量ハ増加セル場合ト, 影響ナキ場合トアリタリ.「アセチール隔リン」注射ニテハ腸液量竝昨酵素総量ニハ影響ナシ.「アドレナリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素総量ハ減少セリ. 次ギニ「ホルモン」製剤中「ビツイトリン」注射ニテハ腸液量竝ビニ酵素総量ニハ影響ナシ.<BR>純體液性分泌刺戟剤ナル「ヒスタミン」及ビ渡薐草「エキス」部チ「スビナチン」ノ皮下注射ニテハ, 腸液量竝ビニ酵素總量ハ稍ゝ増加ヲ示シタリ.<BR>次ギニ榮養刺ナル葡萄糖・「グリココール」・脂肪乳化剤ナル「ヤノール」・「ヴィタミン」B剤注射ニテへ腸液量竝ビニ酵素総量ニハ影響ナシ.<BR>以上ノ實験ノ結果腸液中酵素含有量, 換言スレバ酵素濃度ハ如何ナル藥剤ニヨルモ殆ド影響ナキヲ認メタリ・尚「インシュリン」・葡萄糖注射實験ニ於イデ, 血糖ノ著明ナル變化アルニモ拘ラズ腸液分泌ニハ影響ナキコトヨリ, 腸液分泌ニ於イテハ體液神経性機轉ナキコトヲ認ム.
著者
土井 次夫
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.658-669, 1937-07-10 (Released:2011-06-17)
参考文献数
34

世界文化の進展に伴ない衛生思想普及し一般に我が國民も寄生蟲に對して注意を梯ふ様になり, 又一方各府縣に於ても各機關を通じて寄生蟲多き町村の寄生蟲駆除も盛に行はれて, 今昔を比較すれば寄生蟲保有者は甚だ減少せるものの如く思はるゝが, 大都市を除く外は必すしも然らす, 甚だ遺憾とする所である.而して蛔蟲症は一般に民間病とも言はれて其の駆除も一般民間の手に依りて行はれ, 醫院特に大擧附屬醫院に來る者は殆ど無い. 所が最近他の二三の病院に於て蛔蟲駆除を行はれたたが蛔蟲排出せす激しき饑餓痛あり, 又糞便潜血反應陽性なるに依りて十二指腸潰瘍として治療されてゐたが何等快方に向はす十二指腸潰瘍の手術を希望して當内科に來た患者がある. 其の糞便檢査を行っ九處多數の蛔蟲卵及び鞭蟲卵と少數の十二指腸蟲卵とを見出し, 「アスカリドール」及び「マクニン」を以て駆除した所蛔蟲無慮82條, 十二指腸蟲5條, 鞭蟲3條を排泄して症状全く消失したたる例に遭遇したから之を茲に報告せんとする.
著者
岩味 永夫
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.573-592, 1942

犬ニ於ケル「アトファン」胃潰瘍ノ生成ニ關シテハ既ニ久米, 庄司, 武本及ビ岡田氏等ノ外, Wagoher, Barbour u.Flak等モ共ニ實驗的ニ證明セリ.余モ「キノフェン」ノ連續的經口的投與ニ依リテ全例即チ100%ニ胃潰瘍ノ發生スルヲ認メタリ.以下實驗ニハ「キノツェン」ノ連續酌經口的投與ニ依リ人工的胃潰瘍ヲ作リ, 之ニ「スチムリン」Mヲ皮下ニ注射シテ生理的食鹽水ヲ注射セシ對照例ト比較觀察セル成績ヲ發表セントス.<BR>糞便潛血反應ハ「スチムリン」M注射例ニ於テハ對照ニ比シ其ノ陽性度減少傾向大ナリ.<BR>體重ハ「キノフェン」投與後ニ於テハ何レモ滅少セをモ, 「スチムリン」M注射例ニ於テハ胃剔出前ニ於テ體重ノ復舊傾向ヲ見タルモ對照例ニ於テハ尚一層減少ノ傾向ニアリダリ.<BR>肉眼的所見トシテハ「スチムリン」M注射例ニ於テハ潰瘍面非常ニ小サク深ク陷凹セズ, 壊死組織・出血痕ヲ認メズシテ對照例ニ比シ治癒傾向非常ニ大ナルヲ認メタリ.<BR>組織學的所見トシテハ對照例ニ比シ粘膜上皮ノ再生高度ニ行ハレ肉芽組織ノ新生モ強ク, 一部結締組織ノ増殖ヲ認メ治癒傾向著シキヲ認メタリ.<BR>尚「キノフェン」ノ非經口約投與トシテ5%「ギトーサン」注射液5.0cc宛15日間注射セシニ全例ニ於テ胃幽門部粘膜ニ糜爛形成ヲ認メタルモ.「スチムリン」Mヲ同時ニ注射セシモノニテハ1例ニモ麋爛形成ヲ認メザリキ.<BR>以上ノ實驗ニ依リ「スチムリン」「ハゼキノフェン」胃潰瘍ニ對シテ治療的並ビニ豫防的ニ效果アル事ヲ認メタリ.
著者
宅間 清
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
消化器病学 (ISSN:21851158)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.703-706, 1936-07-10 (Released:2011-06-17)

一般に自殺の目的を以て内服さるゝ劇毒藥は多種多様であつて, 之等の報告例も枚擧に遑がない.就中生體に對し黄燐は催眠剤等に比し猛毒で.最近吾ガ教室齋藤博士の報告に依ると, 其の死亡率は種々なる條件で差異はあるが53.5%である. 余は最近自殺の目的で「猫イラズ」約6gを服用し, 服用後11時間で初めて正規の治療をなし, 治療後13日目に全治せる1例を經驗したこから之れを茲に報告する.