著者
落合 敏夫 森本 文雄 渋谷 正德 大山 豊 岩井 伸幸 飯田 友巳 宇佐美 一幸
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.720-722, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
3

目的:千葉県東葛飾北部地域における蘇生対象となったCPA(cardiopulmonary arrest)に対する静脈路確保について,現場における救急救命士数の影響を検討する。対象および方法:東葛飾北部地域メディカルコントロール協議会の検証グループで静脈路確保に関するチェックシートを作成した。平成22年4月1日から平成23年3月31日の間,域内で発生し救急隊が出動し心肺蘇生術(cardiopulmonary resuscitation)を施行した845件について記入を行った。得られたデータを基に,救急救命士1名乗車と2名乗車とに分け,静脈路確保の試行と成功とを検討した。また救急救命士2名乗車における薬剤投与認定救急救命士(以下,認定と略す)の影響を,認定2名の場合と認定1名の場合および非認定2名とで比較検討した。結果:救急救命士1名乗車589件(69.8%)に対し,2名乗車は256件(30.2%)であった。1名乗車の静脈路確保試行は290件(49.2%),成功は150件で,成功率は51.7%であった。2名乗車での静脈路確保試行は172件(67.2%),成功は116件で,成功率は67.4%と,1名乗車と比較し有意な差を認めた。認定2名乗車時は統計学的に有意な差はないが,最も高い試行率・成功率であった。結語:救急救命士2名乗車は,1名乗車に比べて静脈路確保の試行率・成功率ともに高く,薬剤投与認定救急救命士2名乗車が最も高かった。救急救命士2名乗車体制の有用性が示唆された。