- 著者
-
宇佐美 潤
- 出版者
- 紙パルプ技術協会
- 雑誌
- 紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.11, pp.1277-1283, 2013
2011年3月11日東日本大震災で壊滅的なダメージを受けた日本製紙株式会社石巻工場は全損に近い危機的な状況にあったが復興宣言し「今こそ団結!!POWER OF NIPPON」を合言葉に社員一丸となり1年半の短期間で洋紙事業復興計画通り抄紙機6台,塗工機2台全てが操業を開始した。<BR>復興は瓦礫撤去から始まり電力復旧,原質系復旧,生産ラインそして仕上げ設備復旧と完全復興へ向けた工程で進められた。誰も経験のない整備不可能とも思える設備を復旧するに当たり,使用可能パーツの選定,クラックが入った物の処理方法,海水水没品の処理方法と模索しながらの復旧となった。<BR>仕上部門の復興においてはより高効率な仕上げ工程を確立するため,10数年来の課題として取り組んでいた「NO選化」を目指しカッター欠陥自動リジェクト装置設置,カッター2方差パレット化等の対応で立ち上げより実現した。<BR>一方,将来を見据えた震災復興計画として需要に見合った国内事業ダウンサイジングが図られ,石巻工場で新規事業となるPPC小判仕上設備を立ち上げ新たな取り組みを開始した。経験者が誰もいない状況下でオペレーターは同設備を有する工場で3ヶ月間操業経験を積み,更に経験者を配備しながらの立ち上げとなった。<BR>復興したものの震災影響による錆付や地盤沈下の問題対応,仕上げ部門の高効率化を目指す生産体制構築及び新規事業の早期安定化が今後の課題となる。