著者
宇野 美幸
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-22, 1987-04-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
16

帝京大学病院における1972年から1980年までの単胎分娩3, 220件の, 産科異常の頻度を, 児および母の出生季節から検討した.1.産科異常の発生の月別分布を分娩月から調べた.その結果,1) 早産は6~7月に多く, 過期産は1月と4月に多い傾向がみられたが有意ではなかった.2) 微弱陣痛は, 5~9月に少なく, 早期破水および前期破水は7~11月に多く, 羊水混濁は2~4月に多いが, 分娩遷延の発生には有意な季節性は認められなかった.3) 分娩時出血多量は, 8~12月に少なかった.臍帯巻絡は4~10月に多いが, 胎児仮死, 骨盤位には季節性は認められなかった.2.産科異常の発生を, 母の生まれ月から調べた.その結果,1) 3~7月生まれの母では過期産になる頻度が高い.2) 微弱陣痛, およびこの微弱陣痛と合併することが知られている分娩遷延, 早期破水および前期破水, 羊水混濁で, 夏季生まれの母にその発生が少ない傾向が共通して認められた.3) 分娩時出血多量も, 5~9月の夏季生まれの母で少なかった.臍帯巻絡は10~11月生まれで多く, 胎児仮死, 骨盤位では母の生まれ月による差は認められなかった.4) 産科異常のまったくなかった例は4~9月生まれに多かったが, 微弱陣痛およびその関連する産科異常に限ってなかった例の方がより顕著に4~9月生まれに多かった.