著者
安 玉発 慶野 征〓 齋藤 勝宏
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.233-241, 1996-03-29
被引用文献数
3

中国農村経済体制改革の推進に伴い,従来の国営商業野菜流通システムが再編され,大消費地から離れた遠隔地野菜産地出荷量及び産地卸売市場数の増加が注目されてきている.本稿では,調査地として山東省魯中地区を選定し野菜流通システムの再編が産地形成に果たす役割について考察した.この地区は,中心卸売市場としての寿光卸売市場及び中小の郷・村級卸売市場を設立することにより,一大産地を形成するに至った産地でもある.分析の結果得られた主な知見は以下の通りである.先ず第一に,集団出荷組織を持たない中国においては,寿光市場だけではなく中小の周辺卸売市場が野菜生産発展と農家の所得を増大させる上で重要な役割を果たしたこと,寿光卸売市場は産地野菜を流通させる上で非常に重要な核となっていること。第二に,取引代理人制度中心卸売市場においては効率的な取引を行う上で非常に重要な役割を果たしていること.そして第三に,野菜流通システムの確立は,流通コストの逓減効果,当該産地で生産された野菜の広域流通推進効果,さらには取引代理人制度が産地の拡大産地競争力の形成を促進する効果を持つことである。