著者
安元 悠子
出版者
国立大学法人 琉球大学島嶼地域科学研究所
雑誌
島嶼地域科学
巻号頁・発行日
vol.2, pp.97-116, 2021

本稿では,琉球諸語から日本語標準語への言語シフトの過程を経験した個人の言語レパートリーに影響を及ぼした言語イデオロギーの記述・分析をおこなう。琉球諸島における「離島」で生まれ育った琉球諸語の話者は,人生において拠点の移動を経る中で,「中央へのまなざしと周縁性の自覚」,「言語の階層性」といった標準語イデオロギーと対峙しながら,「地域基準」「社会基準」にもとづいた言語使用をおこなっていることが明らかになった。言語的多様性を特長とする琉球諸語において,個人の言語体験に注目し詳細を記述することは,言語の衰退プロセスを紐解く鍵となり,今後の言語維持継承の一助になると考える。