著者
安元 隆子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

明治時代に日本の同化政策により民族存亡の危機に瀕したアイヌ民族を取り上げ、これまで文学の中にどのようにアイヌが描かれてきたのかを検証する。その際、アイヌ人の文学だけでなく、日本人が描いたアイヌの文学を含め、近・現代を通して文学におけるアイヌ像の変容を追い、「滅亡の民」から最近の「生のエネルギーに満ち自然と共に生きるたくましい民族」へのイメージ転換の契機と理由を、漫画、映像作品も含めて考察する。また、日本に隣接するロシアの文学の中のアイヌ表象や、米・豪の文学に著された先住民族との対立、反省、和解、共生への道程と日本の場合とを比較し、文学の立場から真の多民族共生への道を模索する。
著者
安元 隆子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

チェルノブイリ原発事故がどのように描かれてきたのかを考察した。主にスベトラーナ・アレクシェービッチの『チェルノブイリの祈り』、グードルン・パウゼヴァングの『雲』、若松丈太郎の連詩「かなしみの土地」、チェルノブイリ原発事故を予見した映画としてタルコフスキー『ストーカー』を論じた。『チェルノブイリの祈り』は社会主義からの訣別と人間の生と愛への希望というテーマを証言集全体の構造を分析することで明らかにした。また、『雲』では登場人物の核に対する意識の差が主人公の父方、母方の意識の差と重なること、「かなしみの土地」では想像力の飛躍に基く詩法を明らかにし、福島原発事故への架橋の意味があることを評価した。