著者
安部 治彦 安増 十三也
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

神経調節性失神の治療法として、薬物治療と非薬物治療(ペースメーカやトレーニング治療)がある。しかしながら、薬物治療に関する種々のプラセボコントロール研究では、いずれの薬剤の有効性も証明されていない。また、ペースメーカ治療はペースメーカ植込み手術によるプラセボ効果によるものであることが判明した。そのような科学的背景から現在の神経調節性失神の治療では、トレーニング治療を中心とした非薬物治療が最も有効であると考えられている。本研究ではこのトレーニング治療の有効性を検討した。方法・対象:Head-up tilt検査において失神が誘発され、神経調節性失神と診断された患者13名に1)失神の病態生理や予後、予防法の教育指導、ならびに2)自宅あるいは職場でおこなうトレーニング法(起立調節訓練:1日1回30分)の2つを行ない、治療1ヶ月後に再度head-up tilt検査を行ないタスクホースモニターにて血行動態を中心にその予防効果を検討した。結果:control head-up tilt検査において、全例で失神が誘発されたが、治療1)、2)施行1ヶ月後には、全例で失神の誘発は不可能であった。Head-up tilt検査時の血行動態ではコントロール時と変化を認めなかった。結論:神経調節性失神のトレーニング治療効果には、トレーニングによる教育効果が大きいことが判明した。